筆者の体験談です。保育現場の「バタバタ」から逃げ続けたベテラン保育士A先生。しかし園長の痛烈な一言が波紋を呼び、A先生も動き始めます。チーム戦である保育の現場における、ベテランの責任を突きつけた一幕です。
画像: 保育現場で、大変な仕事は若手に押し付ける『ベテラン保育士』→ 改心させた、園長の【愛の一喝】

保育現場の「バタバタ」しわ寄せは誰に?

保育園の現場は、常に予測不能な「バタバタ」の連続です。
子どもたちが活動から次の活動へ移る場面など、その都度、保育士たちは瞬時に動き、適切に場を収める必要があります。まさに「チーム戦」です。

しかし、私が勤める園には、その「バタバタ」からいつも距離を置くベテラン保育士、A先生がいました。

いつも落ち着いた空間にいるベテラン

A先生(50代)は、じっくりと遊んでいる子どもたちを見守るような、比較的静かな空間にばかりいる傾向がありました。
一見すると余裕があり、子ども一人ひとりに寄り添っているように見えますが、実は、子ども同士のいざこざなど、大変な場面にはほとんど姿を現しませんでした。

さらにA先生は、自分の周りに“動ける保育士”を配置し、自分が動かずに済むよう立ち回っていたように見受けられました。
そして「私だって大変なのよ」といった、自身の負担を訴えるような声が聞かれることもありました。

若手にしわ寄せがいく現実

結果、大変な場面は、経験の浅い若手保育士が対応することが増えていきました。
若手たちは戸惑いながらも必死に現場を回し、子どもたちと向き合いますが、日々の疲労が積み重なり、心身ともに限界を感じている職員も少なくありませんでした。

それでも、A先生がベテランであるがゆえに、誰も強くは言えず、不満を内に秘めていました。

園長からの痛烈な一言

しかし、現場の状況をよく見ていた園長は、ある日の会議で皆の前で切り出しました。

「この園で一番の大ベテランはA先生ね。次にベテランはB先生ね……! 先生方はやっぱり若手職員よりも経験も豊富で、もちろん給与だって高い。だからこそ、大変な場面では若手職員を守って、自分が動かないとね! その姿を見て、若手職員が学んで成長していくんだから、よろしくね!」

園長の口調は穏やかでしたが、その言葉はA先生にとって、ベテランとしての立場と責任を突きつけられる、まさに強烈な一撃となりました。園長は、A先生個人の責任を追及するのではなく、ベテランの経験と知識をチーム全体で活かし、若手を育てるという園全体の目標を再確認したのです。私たちにも、園長の意図が痛いほど伝わってきました。

ベテランの責任とは

その日、A先生は黙り込んだままでしたが、その後、彼女の動き方に少しずつ変化が見られるようになりました。

これまで避けていた「バタバタ」する場面にも、積極的に顔を出し、困っている若手保育士に自ら声をかけ、的確な指示を出すようになったのです。最初はぎこちなかったものの、次第にその動きはスムーズになり、若手職員からも感謝の声が上がるようになりました。

保育現場はチーム戦です。経験を積んだ者だからこそ、大変な場面で頼られる存在であってほしい。園長の一言は、私たち全員に「ベテランの責任とは何か」を改めて考えさせられた出来事でした。

【体験者:30代・筆者、回答時期:2025年7月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:K.Matsubara
15年間、保育士として200組以上の親子と向き合ってきた経験を持つ専業主婦ライター。日々の連絡帳やお便りを通して培った、情景が浮かぶ文章を得意としている。
子育てや保育の現場で見てきたリアルな声、そして自身や友人知人の経験をもとに、同じように悩んだり感じたりする人々に寄り添う記事を執筆中。ママ友との関係や日々の暮らしに関するテーマも得意。読者に共感と小さなヒントを届けられるよう、心を込めて言葉を紡いでいる。

コメントを読む・書く

This article is a sponsored article by
''.