教師である兄から聞いた話です。不登校の末に退学してしまった生徒と10年後に思いがけず再会。立派な大人へと成長した彼とお酒を酌み交わし、教師として最高にうれしい時間を過ごすことができた、前向きな気持ちになれるエピソードです。
画像: 不登校で悩み、退学した生徒を救えず後悔。10年後 → 大人になった彼の言葉に「忘れられない」

届かなかった思い

かつて担任のクラスにT君という不登校で悩んでいた生徒がいました。
面談や家庭訪問など、さまざまな方法で関係を築こうと努力したものの、心の扉はなかなか開かず、結局T君は退学してしまったのです。
自分の力不足と教師としての無力さを痛感しました。

10年後の思いがけない再会

それから10年。
ある日、部活動の引率で、ある大会に出かけました。会場にはカメラマンがいて、生徒たちの活躍を撮影していました。
その時です。カメラマンが声をかけてきました。
「先生! お久しぶりです。」
名乗られてびっくり!
なんと、あの時退学したT君だったのです。
カメラを抱えたT君は立派な青年に成長を遂げていました。
「先生! 俺、今カメラマンなんです。」
T君は笑顔でそう言いました。
「立派になったなぁ。今度ゆっくり食事でもしよう。」
お互い仕事中だったこともあり、ゆっくり話すことができず、その場では連絡先だけを交換し、改めて食事に行く約束をしました。

過去が導いた現在

後日、居酒屋で話をすることに。
聞けばT君は、退学後通信制の高校に入学し、無事に卒業。
その後、大学の写真学科に進学し、夢だったカメラマンとして活動している、とのこと。
さらに彼は、不登校の子供たちを支援するボランティア団体にも所属し、自身の体験を語ることで、苦しんでいる子供たちの力になりたいと、活動を続けているのだとか。
「僕みたいに、迷ってもちゃんと出口があることを伝えたいんです。」
教師として、当時は何もしてあげられなかったと思っていた。でも、T君はちゃんと自分の足で歩き出していたのです。

人生に無駄なことなんてない

人生に“正解”なんてないのかもしれません。
遠回りしても、そこで得た経験を誰かの力に変えられる人はきっと強い。
このことは、教師人生で忘れられない1ページになりました。

【体験者:50代、男性教員 回答時期:2025年6月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒヤリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:大下ユウ
歯科衛生士として長年活躍後、一般事務、そして子育てを経て再び歯科衛生士に復帰。その後、自身の経験を活かし、対人関係の仕事とは真逆の在宅ワークであるWebライターに挑戦。現在は、歯科・医療関係、占い、子育て、料理といった幅広いジャンルで、自身の経験や家族・友人へのヒアリングを通して、読者の心に響く記事を執筆中。

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