お酒を提供するお店で、酔っぱらって騒ぐ人がいるのはあまり珍しいことではありません。ただし、他のお客さんに迷惑がかからない程度であればいいのですが……。今回はお酒を出す飲食店で働いているときに、とんでもない酔っぱらい客に遭遇した経験のある筆者の知人、Nさんのお話です。
画像: 居酒屋で「マズい!」と騒ぐ酔っ払い常連客にピシャリ! 店主が下した『究極の決断』

居酒屋のアルバイト

Nさんは当時、親族が経営している居酒屋でアルバイトをしていました。

そのお店はお値段が手頃なのに料理がおいしいと評判のお店で、厨房を仕切っている店主はNさんの従姉妹でした。Nさんはホールを伯母さんと2人で担当し、忙しく働いていました。

「こんばんは~」
お客さんのピークが過ぎ、店内が少し落ち着いてきた頃。1人の女性がお店のドアを開けて顔を出しました。
「あ、いらっしゃいませ!」
「また来ちゃったー、酔ってるけどごめんね」
その女性客は常連さんの1人でしたが、毎回すでに酔っぱらった状態でお店に来るお客さんでした。

その常連さんには酔うと困った癖があるため、ホールにいる伯母はなんともいえない表情でそのお客さんを見ています。しかし店主である従姉妹はいつもと変わらない様子で、注文された料理を作り始めました。

困った常連客に……

「うーん、マズい!」
カウンター席に座っている常連さんが、大きな声でそう言いました。実はこの常連さん、料理を頼んでは「マズい!」と大きな声で言う癖があったのです。

しかし酔っていないときは非常に低姿勢で、たまに飲み会を開いて沢山他のお客様を連れて来てくれたりするため、Nさんと伯母は、その対応に常に葛藤を抱えていました。

「相変わらずこの店はマズい!」
すっかり酔っている常連さんはまた大きな声でマズいと騒ぎ出しました。Nさんがその手元を見ると、せっかくの料理に大量の醬油をかけているのが見えました。
「そりゃなんでもマズくなるよ、そんなに醤油かけたら……」
マズい発言に他のお客様がざわつきだしたこともあり、Nさんが常連さんに注意しようと口を開いた瞬間、厨房から従姉妹がさっと出てきました。

「もうすぐタクシーが来ますので、どうぞお帰り下さい」
「え?」
いつもと同じにこやかな表情のまま、従姉妹は常連さんに帰って欲しい旨を伝えました。
「本日のお代金は結構です。でも、もう来ないでください」
「え、そんなあ! マズいって言ったの怒ってるの? 酔っぱらいの冗談じゃないのー!」
常連さんは親し気に従姉妹に言いましたが、従姉妹は一蹴。
「酔っているからといって、他のお客様にご迷惑をおかけする行為は許されません」と毅然とした態度で返しました。

最終的には従姉妹自ら常連さんの手を引き、店から連れ出してタクシーに乗せてしまいました。
「大丈夫なの?」
Nさんが尋ねると、従姉妹はスッキリとした顔で答えました。
「常連さんだけど、もう我慢の限界! せっかく作ったものを無駄にされたりマズいって言われたり。やっと出禁って言えて良かったわ」

その後常連さんは数回お店に謝罪に訪れましたが、従姉妹は頑として聞き入れなかったそうです。

酔っぱらうと明るくなったり、おしゃべりになったりと印象が変わってしまう人は少なくありません。しかし人に迷惑をかけたり、不快にさせたりするほどの泥酔は良いお酒とは言えませんね。

【体験者:20代・女性アルバイト、回答時期:2025年5月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:齋藤緑子
大学卒業後に同人作家や接客業、医療事務などさまざまな職業を経験。多くの人と出会う中で、なぜか面白い話が集まってくるため、それを活かすべくライターに転向。現代社会を生きる女性たちの悩みに寄り添う記事を執筆。

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