これは、筆者の知人のA子さんから聞いた話です。家事と育児に追われる中で夫との関係が冷え切り、「もう限界かもしれない」と感じていたA子さん。しかし、ある晩の出来事が夫婦の関係に静かな変化をもたらしました。
画像: 家事育児ワンオペ地獄に「夫といる意味ある?」離婚を決意した夜 → 夫が涙ながらに語った『本音』とは

すれ違う日々の中で

毎日、家事と育児に追われ、気づけば心も体も擦り減っていました。
夫は仕事で毎晩帰りが遅く、家ではほとんど無言。
頼み事をしても聞き流され、子どもの夜泣きにも起きてこない。
私はずっと、この家でひとりで戦っているような気がしていました。

何度か話し合いも試みましたが、「忙しいから」と短く返されて終わり。
私の気持ちが伝わっていないと感じるたびに、寂しさと虚しさが積もっていきました。
「この人と一緒にいる意味があるのか?」そんな疑問が、日常の中で何度も頭をよぎるようになっていたのです。

「別れたい」と思った夜

ある晩、私はついに覚悟を決めました。
子どもが寝静まった後、冷静さを装いながら、夫に向かって「少し話せる?」と声をかけました。
心の中では、「もう限界だ。これで何も変わらないなら、どうするか考えないと」という強い決意がありました。

けれど、私の言葉をさえぎるように、夫がぽつりと「A子、ごめん」と言ったのです。

初めて見た夫の涙

驚いて顔を上げると、夫の目にはかすかに潤みが浮かんでいるのが見えました。
「俺、最近気づいてたんだ。A子が夜中に1人で子どもをあやしたりして、疲れてること。でも、どうすればいいか分からなくて……。父親としても夫としても、全然ダメだって分かってる。だけど、ちゃんとやり直したい」
震える声でそう言った夫の姿に、私はこれまで見たことのない“弱さ”と“誠実さ”を感じました。

実は数日前、共通の友人が夫に「奥さん、最近疲れてるみたいだけど大丈夫?」と尋ねたそうです。夫も私の様子に漠然とした違和感を覚えてはいたものの、それがどれほどのものかまでは理解していなかったとのこと。友人のその一言から、私の変化が疲労によるものであり、無理をしていたのだということに気づかされたといいます。

おそらく、私が何も言わずにそつなくこなしてしまうため、夫なりに「A子はしっかりしているから任せても大丈夫だろう」と思い込み、自分の役割に気づく機会がなかったのでしょう。夫は、自分が家族のために働いているという自負があった一方で、家庭内で具体的に何をすれば良いのか、その役割が見えずに立ち尽くしていたのかもしれません。

あの瞬間、私の中に張りつめていたものがふっと緩んでいくのを感じました。
心の奥にあった「わかってほしい」という気持ちが、やっと届いたような気がしたのです。

少しずつ、でも確かに変わった

それからの夫は、劇的ではないけれど、確かに少しずつ変わっていきました。

子どもの送り迎えを交代してくれたり、夕飯後に「手伝おうか」と声をかけてくれたりするように。
不器用ながらも「家族と向き合いたい」という意志が、言葉ではなく行動に表れるようになりました。
あの日、別れを決意していた私が今もう一度一緒に歩いていこうと思えているのは、あの涙と、夫の「変わりたい」という本気の気持ちがあったからです。

【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2025年6月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:池田みのり
SNS運用代行の職を通じて、常にユーザー目線で物事を考える傍ら、子育て世代に役立つ情報の少なさを痛感。育児と仕事に奮闘するママたちに参考になる情報を発信すべく、自らの経験で得たリアルな悲喜こもごもを伝えたいとライター業をスタート。

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