誰にでもある、ちょっとした油断。でも、その先に待っていた出来事は、想像の斜め上でした。今回は、筆者の知人・千秋さん(仮名)が体験した、自転車をめぐる驚きとモヤモヤのエピソードです。
画像: スーパーで「それ私の自転車ですけど!?」→ 盗もうとした犯人の『逆ギレ発言』に「言葉を失った」

いつものスーパーで

千秋さんは、仕事帰りにいつものスーパーへ立ち寄りました。
「ほんの10分くらいだし」と、自転車の鍵はかけずに駐輪場へ停め、店内に入りました。
目当ての食材をさっと選び、会計を済ませて外に出たそのとき、足がふと止まりました。

無い。自転車が、無いのです。

「きっと、警備スタッフが並べ替えたのね」
そう自分に言い聞かせながら、千秋さんは駐輪スペースの端から端まで歩きました。

けれど、どこにも見当たりません。
ついに、店員に声をかけ、いっしょに敷地内を探すことにしたそうです。

えっ、乗ってる!? 「それ、私のなんですけど」

店員と一緒に敷地内を回っていた千秋さんは、別の出入口で思わず足を止めました。
「あれ……」
そこには、見覚えのある自転車にまたがり、今まさに帰ろうとしている中年の女性が。

慌てて駆け寄り「あの、それ、私の自転車なんですけど」と声をかけると、女性はピタリと動きを止めました。
振り向いたその顔には、驚きというより、不機嫌そうな表情が浮かんでいたといいます。そして返ってきたのは、想像もしなかった言葉でした。

「鍵かけていない方が悪いだろ! だったら乗ってもいいじゃない」
「私が先に乗ってるんだから、私のだよ! 泥棒め、変な言いがかりはやめてくれ」

あまりの言い分に、千秋さんは言葉を失ってしまったそうです。

さらに女性は

「まったくいやだよ、この泥棒め! 先に見つけたのは私だよ!」

たたみかけるように怒鳴りつけてきました。

揉めた直後に“しれっと逃走”

まさか所有者の自分が、“泥棒”呼ばわりされるとは思ってもみなかった千秋さん。
店員がすかさず千秋さんに「防犯登録してますよね?」と確認し、千秋さんは「はい、もちろんです」と冷静に返しました。

その間も女性は「あんた警備でしょ? 見張ってないのが悪いんじゃない!」と大騒ぎして、今度は店員に矛先を向けてきます。

「これはこちらのお客様の自転車です。勝手に持ち出したら罪になりますよ」と店員が諭します。

すると「じゃあ、ちゃんと警備しなさいよ! しかも鍵がかかってなかったのが悪いでしょ!」と語気を強めて反論。

「いいえ。鍵の有無にかかわらず、他人の物を無断で使えば犯罪です」

言い合いはしばらく続き、まわりの視線も集まり始めた頃、別の店員が「警察を呼びますよ」と間に入りました。
すると女性は、そっぽを向いたまま自転車を降り、無言でその場からしれっと立ち去っていったそうです。

たった10分の油断がくれた、大きな教訓

女性が立ち去ったあと、千秋さんの手元に、ようやく自転車が戻ってきました。
けれど、心はざわついたまま。取り返せた安堵よりも「時間を返してほしい」という思いのほうが強かったそうです。

「先に乗ったから、私の」と言い放ち、逆ギレして去っていった女性の態度。
怒りと呆れと、なんとも言えないモヤモヤが、じわじわと湧いてきたといいます。

帰り道、ため息まじりに、ぽつりとこぼれました。
「たった10分の油断が、こんなことになるなんて……」

もちろん、自転車に鍵をかけていなかった自分にも落ち度はある。
でも、それ以上に残ったのは、理不尽さと、疲れに似た虚しさでした。

世の中、いろんな人がいる。
だからこそ、自分を守るための防犯は、どんなに短い時間でも怠ってはいけない。
千秋さんは、そんなふうに感じたと話していました。

【体験者:50代・会社員、回答時期:2025年03月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:神野まみ
フリーランスのWEBライター・コラムニスト。地域情報誌や女性向けWEBメディアでの執筆経験を活かし、医療・健康、人間関係のコラム、マーケティングなど幅広い分野で活動している。家族やママ友のトラブル経験を原点とし、「誰にも言えない本音を届けたい」という想いで執筆を開始。実体験をもとにしたフィールドワークやヒアリング、SNSや専門家取材、公的機関の情報などを通じて信頼性の高い情報源からリアルな声を集めている。女性向けメディアで連載や寄稿を行い、noteでは実話をもとにしたコラムやストーリーを発信中。

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