私たち大人が当たり前のように抱えている“固定概念”は、時に子どもたちの素直な心や自由な発想を曇らせてしまうことがあります。ある幼稚園の参観日。そこには、子どもたちの何気ない会話の中から、大人が学ばされる場面がありました。今回は筆者自身が体験した、色と性別にまつわる小さな出来事と、大きな気づきをご紹介します。
画像: 「赤なんて女の子の色だろ!」園で息子に怒鳴るパパ →「私は青だよ。だって──」女児の『刺さる一言』

子どもたちの自由な制作時間に起きた、ある出来事

幼稚園の参観日。子どもたちは「好きな色の画用紙で帽子を作ろう!」という制作に取り組んでいました。色とりどりの画用紙に囲まれ、目を輝かせている子どもたちの姿は、見ているだけで心が和みます。私もそんな微笑ましい空気に包まれていたのですが、ある一言がその空気を一変させました。

思わず凍りついた教室の空気

「変えてきた方がいい!」

そう声を上げたのは、B君のパパ。赤い画用紙を手にした息子を見て、「男だったら青とか緑にしなきゃダメだろ」と続けたのです。その瞬間、教室がピタリと静まり返り、子どもたちも保護者たちも、なんとも言えない空気に包まれました。せっかく自由に取り組んでいた子どもたちの表情にも戸惑いが見え始め、私は内心モヤモヤとしたものを感じていました。

小さな女の子の勇気あるひと言

すると、1人の女の子・Dちゃんがすっと立ち上がり、こう言いました。

「私は女の子だけど青にしたよ。だってイルカが好きだから! イルカの帽子を作るの!」

その堂々とした一言に、張り詰めた空気がふわっと緩み、周囲から笑みがこぼれました。そしてDちゃんはB君に優しく問いかけました。

「B君も赤にした理由があるんじゃない?」

少しうつむいていたB君は、勇気を出して答えました。

「僕、消防車が好きだから。消防士さんになりたいから赤にしたんだ。」

その言葉に、Dちゃんは「それ、めっちゃかっこいいじゃん!」と声を弾ませ、他の子たちも「いいね!」「赤、似合ってるよ!」と次々に声をかけてくれました。B君パパはバツが悪そうに「理由があるなら早く言いなさい」と小さくつぶやき、そっと椅子に腰を下ろしました。

固定概念に気づかされた一日

私はその場面を目の当たりにしながら、深く考えさせられました。「男の子だから」「女の子だから」といった固定概念は、大人が知らず知らずのうちに抱えてしまっているもの。でも、色の好みに性別は関係ない。大切なのは、その子が「何を好きか」という気持ちです。

この日、私は自分の中にも残っていた古い価値観に気づきました。そして、子どもたちのまっすぐな「好き」に対して、どんなときも耳を傾けられる大人でありたいと心から思いました。

たった一日の参観日。でも、私にとっては、子どもたちの自由な感性と勇気から大きな学びをもらった、かけがえのない時間になりました。

【体験者:30代・主婦、回答時期:2025年5月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容をもとに、個人が特定されないよう構成しています。

ltnライター:北田怜子
経理事務・百貨店販売を経て、現在はWEBライターとして活動中。家事や育児と両立できる働き方を模索する中でライターの道へ。自身の体験を活かしながらリアルで共感を呼ぶ記事を多数執筆。人間関係・子育て・日常の“あるある”を中心に、女性に寄り添ったコンテンツを発信している。

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