筆者の話です。
私の地元には、嫁入り道具として「お人形を持たせる風習」があります。
母と一緒に選んだ大切な人形でしたが、義母の「かわいい」という一言で──
画像: 大切な嫁入り人形を奪った義母。「やっぱり一番かわいいわ♡」自慢する義母に、私が言えなかった一言

嫁入り道具の人形

私の地元には、結婚の際に「お人形を持たせる風習」があります。
結婚前、母と一緒に訪れた展示会で、お気に入りの人形を1時間かけて選びました。
その人形は、私の大好きな作家さんの一点物。
柔らかな表情に惹かれ、母と相談しながら丁寧に選んだ記憶があります。
「大事にするね」
そう母に伝え、嫁入り道具として持たせてもらいました。

義母の手に渡って

けれど結婚後、荷ほどきの最中にその人形を見た義母が「かわいいわね」と言って手に取り、まるで自分のもののように飾ってしまったのです。

転勤族の生活が始まったばかりで、人形が傷つくのも心配でした。
だから「義実家に置いておこう」と自分を納得させ、預けた形にしました。

けれど、それ以来行くたびに義母は「やっぱりこれが一番ね」と自慢げに話し、返してとは言い出せませんでした。

代わりの贈り物

義母が気に入っているのならと、誕生日や母の日には、同じ作家さんの人形を贈りました。
でも、義母はいつも「これが一番」と言って、最初の人形を手放そうとはしません。
私の気持ちも伝わらず、義母を否定することもできず、ただただモヤモヤが募るばかりでした。

言えなかった「それ、私のです」

数年後、いろいろあって離婚が決まり、義実家に預けていた荷物を引き上げることに。
でも、義母は人形のことに一切触れず、私も心が疲れ果ててしまっていて、何も言えませんでした。そしてそのまま、嫁入り人形を義実家に置いてきてしまったのです。

後日、事情を知った母から「お守りみたいなものだったのに。なぜ置いてきたの」と叱られました。
あのとき、きちんと自分の気持ちを伝えるべきだったのかもしれません。
義母に遠慮して、もめたくなくて、言えなかった
「それ、私の人形です」の言葉。
別れる相手に忖度など必要なかったのに……。

たった一言が言えなかったことを、私は今でも後悔しています。

【体験者:50代・筆者、回答時期:2025年5月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:Kiko.G
嫁姑問題をメインテーマにライター活動をスタート。社宅生活をしていた経験から、ママ友ネットワークが広がり、取材対象に。自らが離婚や病気を経験したことで、様々な悩みを持つ読者を元気づけたいと思い、自身の人脈や読者の声を取材し、記事として執筆。noteでは、糖尿病の体験記についても発信中。

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