毎日忙しく過ごしていると、つい周りの人の変化に鈍感になってしまうことがありますよね。一緒に暮らす家族でも、小さな変化を感じ取るのはなかなか難しいものです。今回は筆者の友人が夫とのエピソードを聞かせてくれました。
画像: 「あれ? 会社は?」平日昼間に震えながら帰宅した夫。「実は──」その理由を聞いてゾッ、、、!

予期せぬ帰宅

その日、たまたま仕事が休みだった私は、昼過ぎに自宅で洗濯物をたたんでいました。
すると、突然玄関のドアが開く音が。

「こんな時間に誰?」と不思議に思いながら玄関に向かうと、そこにはスーツ姿の夫が立っていました。

思わず「え? 会社は?」と声をかけると、夫はどこかうわの空のまま、「うん……ちょっと早退した」とだけ答えました。

しかし、夫の様子は明らかにいつもと違っていました。
顔色は真っ青で、手は微かに震えています。何かを隠しているのは一目瞭然でした。

理由を聞いて、言葉を失った

心配になり、「どうしたの? 何があったの?」と問い詰めると、夫は小さな声で語り始めました。

「朝、駅のホームで、急に息ができなくなって……。心臓がバクバクして、立っていられなくなった。電車に乗れなくて、そのまま帰ってきてしまったんだ」

夫の言葉を聞いた瞬間、私の頭は真っ白になりました。

もし、倒れていたら?
もし、ホームから落ちていたら?
誰にも気付かれず、最悪の事態になっていたら?

ぞっとするような想像が、次々と頭に浮かんできました。

同時に、「帰ってきてくれて良かった」「無事でいてくれて、本当に良かった」と、涙が出るほど安堵しました。

安堵と後悔

その後、夫は心療内科を受診し、「パニック障害の疑い」と診断されました。

仕事でのプレッシャーや、職場の人間関係によるストレスが、知らないうちに限界を超えていたのだそうです。

「情けなくて言えなかった」とつぶやく夫に、「情けなくなんかないよ。気付けなかった私こそごめん」と言葉を返すのが精一杯でした。

今思えば、夫は疲れている様子を見せていたり、眠れない夜が増えていたりと、サインを出していたはずです。
それを私は“夫が疲れているのはいつものこと”として軽く見て、流してしまっていました。

あの日、「え? 早退? サボり?」なんて軽く考えていた自分が恥ずかしくなりました。
夫は、限界の中で必死に踏ん張っていたのに……。

心の不調は誰にでも起こりうる

幸い、夫はしばらく会社を休み、心療内科に通いながら徐々に回復していきました。

私も、ようやく気付くことができました。
「心の不調は、誰にでも起こりうる」ということに。

元気そうに見える人ほど、周囲に助けを求めるのが遅れてしまうのかもしれません。
だからこそ、近くにいる私が気付くべきだったと、強く思います。

今は、夫婦でゆっくり歩調を合わせながら、少しずつ日常を取り戻しています。

【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2025年3月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:藍沢ゆきの
元OL。出産を機に、育休取得の難しさやワーキングマザーの生き辛さに疑問を持ち、問題提起したいとライターに転身。以来恋愛や人間関係に関するコラムをこれまでに1000本以上執筆するフリーライター。日々フィールドワークやリモートインタビューで女性の人生に関する喜怒哀楽を取材。記事にしている。

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