家族旅行って、ちょっとしたハプニングが一番記憶に残ったりしませんか? 今回は筆者の友人A子さんから聞いた、タイ旅行中に起きた“ある事件”と、その後のお母さまの驚きの変化についてのお話です。
画像: 「そ、ソーリーッ(泣)」異国で『前の席の人をずぶ濡れ』にした母、顔面蒼白 → 外国人が『神対応』

家族で楽しい海外旅行

南国の空気に包まれて、A子さん一家はタイ旅行を満喫していました。寺院めぐりにナイトマーケット、どれも新鮮で刺激的。そして翌日は、楽しみにしていた象乗り体験。

象乗り体験日の朝。
南国特有の蒸し暑さに、A子さんの母は思わず「暑いわね」とつぶやきました。
お迎えのバスに乗り込む直前、母は近くのコンビニでペットボトルの水を買いました。

A子さん一家は、迎えのバスに乗り込み、ワイルドでひどく揺れる山道へ。座席と座席の距離が近いのもあり、車内はムッとする暑さに包まれていました。

しばらくして、母が「喉乾いた」とキャップをひねった――その瞬間。
プシャーッ!

炭酸が、思いきり吹き出したのです。
泡は一直線に飛び、前の席の男性の後頭部を直撃。

家族全員、一瞬で青ざめました。
車内の空気が止まり、 母は固まったまま、手にしたボトルをぽかんと見つめていました。

沈黙、そして異国での謝罪劇

何が起きたのか、一瞬わかりませんでした。でも、前の席の男性の頭が濡れているのを見た瞬間、家族全員、凍りつきました。

「えっ……何これ?」
母は手にしたボトルを見つめ、ぽつり。「水だと思ったのに」

ラベルには小さく「ソーダ」の文字。炭酸水だとは知らず、見た目だけで買っていたのです。

A子さんと弟はとっさに立ち上がり、慌てて叫びました。
「ウップス、ソーリー!(うわ、ごめんなさい!)」

文法なんて気にしていられません。とにかく必死に、知っている限りの英語で謝りました。

車内は気まずい沈黙。周囲の視線がじりじりと集まり、母は居心地悪そうに肩をすくめていました。さっきまでの楽しい空気が、一気にしぼんだ瞬間でした。

母が まさかの“パリピ化”!

静まり返っていた車内に、「アハハハッ!」と大きな笑い声が響きました。
笑い出したのは、濡れてしまった男性の隣に座っていた女性です。

そして本人も、濡れたシャツをぱたぱたさせながらニヤリと笑い、
「ヘイ、イッツ クール! サンキュー フォー フリー シャワー!(気持ちいい! ありがとう、無料のシャワーだね!)」

最高の笑顔で、さらにひと言。

「パーフェクト・タイミング ― イット・ワズ・クレイジー・ヒューミッド!(蒸し暑かったから、最高のタイミングだよ!)」

まさかのジョーク返しに、A子さん一家は拍子抜けして顔を見合わせました。

そのとき、運転席からも陽気な声が響きました。
「パーティーターイムッ!」ノリのいい音楽がスピーカーから流れ出し、バスの中は一気に明るくなりました。

母もつられるように笑い、前の席のカップルと身振り手振りでやりとりを始めました。言葉は通じなくても、何かが伝わっているような空気です。

そして気づけば、母がいちばんノリノリでした。

肩を揺らしながら手拍子を打ち、リズムに合わせて体を動かすその姿に、私たちは思わず笑ってしまいました。

人生、まだまだこれから

帰国後すぐに、A子さんの母がお土産の象のキーホルダーを眺めながら、ぽつりと言いました。
「やっぱり英語、しゃべれるようになりたいわ。あのバスの時間が、忘れられないのよ」

海外旅行でのソーダ事件をきっかけに、母は英会話教室に通い始めました。週に一度のレッスンが、今では何よりの楽しみなのだそうです。

「次は、ハワイでパーティーだわね!」

笑いながらそう語る母の姿に、A子さんは思わず吹き出したそうです。
予想外の旅のハプニングが、A子さんのお母さまの新しい趣味を見つけるきっかけになったのでした。

【体験者:40代・フリーランス、回答時期:2024年1月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:神野まみ
フリーランスのWEBライター・コラムニスト。地域情報誌や女性向けWEBメディアでの執筆経験を活かし、医療・健康、人間関係のコラム、マーケティングなど幅広い分野で活動している。家族やママ友のトラブル経験を原点とし、「誰にも言えない本音を届けたい」という想いで執筆を開始。実体験をもとにしたフィールドワークやヒアリング、SNSや専門家取材、公的機関の情報などを通じて信頼性の高い情報源からリアルな声を集めている。女性向けメディアで連載や寄稿を行い、noteでは実話をもとにしたコラムやストーリーを発信中。

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