友人Nから聞いた話です。いつも荷物を届けてくれる配達員が無愛想で感じが悪いと感じていたN。
しかしある日、その配達員の事情を知って、彼を見る目が大きく変わりました。その理由とは……?
画像: 「うわっ、イヤな配達員だなぁ」挨拶をしても無愛想な態度 → 配達員「実は」思わぬ展開が待っていた

無愛想な配達員

Nの家には仕事柄よく荷物が届きます。しかし担当の配達員は、必要最低限の言葉しか発しない無愛想な人。Nは「感じが悪い人だな」と思いながら受け取っていました。
「今日は寒いですね」とNが明るく声をかけても、彼は作り笑顔で軽く会釈するだけです。Nは次第に「なんなのこの人」とモヤモヤを感じるようになりました。

いつもと様子が違う?

そんなある日のこと。チャイムが鳴りドアを開けると、あの配達員が疲れた様子で荷物を抱えていました。壁にもたれかかるように立っているその姿に、Nは思わず「大丈夫ですか?」と声をかけると、彼は少し驚いたように顔を上げました。そしてポツリと「いや、実は嫁が倒れて。育児と仕事の両立って、思った以上に大変で……。あ、こんなこと話してごめんなさい」とつぶやいたのです。

育児と仕事を掛け持ちしていた

話を聞いてみると、彼は幼い子どもの面倒を見るために残業の多い会社を退職し、転職したばかりでした。昼間は慣れない配達の仕事をしながら、夜には別の仕事もこなす日々。
さらに家では、子どもたちの育児も一手に引き受けており、ほとんど休む時間がない生活を送っているとのこと……。彼が無愛想だったのは、ただ疲れきっていたからだと知ったN。彼は慌てて「お客様に不快な思いをさせていたんですね。本当に申し訳ありません」と深々と頭を下げました。

事情を知ったNは

「仕事を掛け持ちしながら育児をこなすなんて。相当大変なはず」。
Nは自分が誤解していたことを知り、彼に対しての態度を改めました。

それ以来、Nは彼が来るたびに「いつもご苦労様」「寒い中ありがとう」と、ねぎらいの言葉をかけるようになりました。すると次第に、彼の態度にも変化が見られるようになったのです。
少しずつ笑顔が増えて、「こちらこそ。いつもありがとうございます」と返事をくれるようになりました。

Nは「誰だって、外見や態度だけでは分からない深い事情」を抱えていることを、改めて実感しました。無愛想だと思っていた配達員が、実は育児と仕事を掛け持ちしながら必死に家庭を守っていたこと。何気なくかけた自分の言葉で、相手の心が徐々にほぐれていったこと。

Nはこの件を機に、人と言葉を交わすことの大切さに気づきました。今でも配達に来る彼とNの間には、短くとも温かい言葉のやり取りが続いています。

【体験者:40代・主婦、回答時期:2023年12月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:N.tamayura
長年勤めたブラック企業を退職し、書くことを仕事にするためライターに転職。在職中に人間関係の脆さを感じた経験から、同世代に向けて生き方のヒントになるような情報を発信すべく、日々リサーチを続けている。

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