LINEの誤爆は時に人間関係を気まずいものにしますが、ごくまれに良い方向へ転がることもあります。今回はよりによってお姑さんにLINEを誤爆してしまった私の従姉妹、Fさんのお話です。

差し入れは激マズ煮物?!

Fさんは当時旦那さんと2人暮らし。2人とも働いているので食事はどうしても外食やテイクアウトが多くなり、時々近くに1人で住んでいるお姑さんがおかずを差し入れてくれていました。

「お義母さん、いつもありがとうございます」
「いいのよー、ひとりじゃ食べきれないくらい作っちゃったから」
差し入れのおかずはありがたいのですが、これがFさんの好みの味とは程遠いものでした。しょっぱかったり甘すぎたり、時々味がなかったりと、料理があまり得意ではないFさんでもこれよりは美味しく作れると思ったほどの味付けでした。

「お義母さんの料理っていつもこんな感じ?」
「いや、俺が実家にいたときはもっと美味しかったけどな……」
おかずを口に入れた瞬間、首をかしげる旦那さん。しかしFさんも旦那さんも、お姑さんには直接言えませんでした。
「せっかく作ってくれたし、食べよう……」
2人はいつもそう言って、あまり美味しいとは言えないおかずを無理矢理口に運んでいました。

とんでもない誤爆

「Fさんこれ、煮物なんだけど良かったら」
ある日Fさんが会社から帰宅すると、ちょうど差し入れの煮物を持ってお姑さんが来ていたところでした。
「いつもありがとうございます」
「いいのよ、気にしないで」
にこにこと笑って帰って行くお姑さん。おかずがあまり美味しくないこと以外は本当に良いお姑さんなだけに、Fさんは何も言えません。

お姑さんが帰った後、煮物を一口食べたFさん。
「う……しょっぱ」
今回は醤油の入れすぎなのか、とてもしょっぱい仕上がりでした。

「お義母さんが激マズ煮物持ってきてくれたよ」
Fさんは申し訳ないと思いつつ、旦那さんにそうLINEをしました。激マズ〇〇というのは、もう2人の合言葉のようになっていたのです。

数分後、FさんのスマホがピコンとLINEの通知音を奏でました。旦那さんから返事が来たかと思い、スマホを手に取ったFさんは青ざめました。
「やっぱりマズかった? 」
それはお姑さんからのLINE。なんとFさんは先ほどのLINEを間違えてお姑さんに送っていたのです。

意外な反応

「ごめんなさい! 間違えました! 」
慌てて謝罪LINEをするも、既読がついてすぐにお姑さんから電話がかかってきました。
「もしもし、Fさん?」
「はい……」
おそるおそる電話に出たFさん。
「煮物、マズかったんでしょ」
「いや、その……」
「正直に言って、お願い」
「ちょっと……しょっぱかったかな、と」
電話の向こうで、お姑さんが大きくため息をつくのが聞こえました。
「やっぱりそうよねえ……実は最近味覚がおかしいの」
「え!?」
「病院に行った方がいいかしら? ねえFさんどう思う?」
なんとお姑さんはここ数ヶ月、味覚がおかしいと感じ続けていたようです。Fさんは次の休みにお姑さんを病院に連れて行く約束をしました。

その後病院に行き、投薬治療を受けて無事にお姑さんの味覚障害は完治しました。
お姑さんは「あの時FさんがLINEを間違えてくれて良かったわ」と言っていたそうです。

LINEの誤爆が功を奏して、今はおいしいおかずの差し入れをしてくれているとのこと。嫁姑という気を遣う間柄では決して言えないような本音が、誤爆と言う意外な方法で伝わって良かったですね。

ftnコラムニスト:緑子


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