名前は一番大事な個人情報ですよね。名前を勝手に使われて、犯罪に巻き込まれたという人も少なくはありません。
今回は同僚に名前を使われて大変なことになった私の旦那、Sさんのお話です。
画像: ftnews.jp
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知らない男が会社に

「Sさん! 受付にお客さん来てるよ!」
ある日Sさんは仕事中、同僚にそう言われて慌てて受付まで出て行きました。来客の予定はないし、取引先との打ち合わせはまだ先だし、保険の勧誘かな?と呑気に考えていました。

「おい、お前がSか! 俺の女に手を出しやがって!!!」
Sさんが受付に到着するなり、ちょっとコワモテの知らない男に胸ぐらをつかまれてしまいました。
「お、俺の女? 誰のことですか」
まだ新婚ホヤホヤなのでまったく身に覚えがなく、Sさんはただその男性の手を離そうともがきました。
「誰のこと、だと!? この近くのスナックで働いてるユミって女だよ! 知らねえとは言わせねえからな! こっちはお前の名刺持ってんだ!」
コワモテの男は片手を離してポケットに突っ込み、Sさんの名刺を引っ張り出して目の前をちらつかせました。
「ああ、それは確かに僕の名刺ですけど……ユミさんのことは本当に知らないですって!」
「この期に及んでまだ言い逃れするつもりか!?」
コワモテの男があまりにも大声で騒ぐので、受付には社員たちが集まってきました。警備員を呼べ!という声も聞こえます。

しかしコワモテの男はSさんの胸ぐらを掴む手を離しません。

ユミ、登場

「あんた、やめてよ!!!」
叫び声と共に、ひとりの派手な女性が飛び込んできて男に飛びつきました。
「Sさんとはそんなんじゃないったら……って、あんた誰!?」
どうやらユミさんらしいその女性は、男に胸ぐらを掴まれているSさんを見て驚いた様子。
「Sですけど……」
「違う違う、この人じゃない!」
「はあ!?」
男はパッとSさんから手を離しました。
「だから僕じゃないですってば……誰かが僕の名刺悪用したんでしょ」
ユミはキョロキョロと辺りを見渡したかと思うと、ひとりの男性社員を指さして言いました。
「あ、あの人よ。私と寝たの」
ユミが指さしたのはSさんの同僚でした。
「おい、待て!!!」
コワモテの男はSさんの同僚を追いかけ、襟首を掴んだところで警備員が到着し、男は取り押さえられました。

その後上司から話を聞きたいと言われ、Sさんと同僚は会議室に呼び出しをくらいました。
そこで同僚は新婚ホヤホヤのSさんが羨ましくて、Sさんの名を騙ってスナックの女の子と遊び歩いていたと自白したのです。

騒ぎを起こした責任を問われ、同僚は異動。ただ巻き込まれただけのSさんはしばらく人間不信に陥ってしまいました。名刺はビジネスマンの必須アイテムですが、悪用されるのは怖いですね。

ftnコラムニスト:緑子


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