パートはフルタイムと雇用契約が違いますし、もし旦那さんの扶養に入っていたら、稼ぎすぎると余計に税金を引かれて損してしまうこともあります。
今回は超人手不足の店に採用されてしまったばっかりに、パート契約のはずがフルタイムばりにシフトを入れられて大変なことになったSさんのお話です。

短時間のパート契約

Sさんは結婚して3年目の主婦。まだ子どももいないので、マイホーム貯金の足しにするためにパートに出ることにしました。
「週に3日、4時間の契約になりますがよろしいですか?」
「はい!よろしくお願いします!」
さっそく面接を受けたのが、全国にチェーン展開している衣料品量販店。そこでSさんは週に12時間働くという契約で採用されました。

その衣料品量販店はかなり大きい店だったので店長を含めた社員が5人と、学生アルバイトや主婦パートが多く在籍していました。同年代の友達が欲しかったSさんはすぐに他の主婦パートと仲良くなり、しばらくの間は楽しく働いていたのです。

大ヒット商品のおかげで満員

Sさんが勤め始めてから最初の冬に、勤務先の衣料品量販店ではテレビでも大々的に紹介されるほどの大ヒット商品を発売。連日それを買い求めに来るお客さんがあふれ、品切れが相次ぐほどの賑わいになりました。
「何これ…全然人が途切れない!」
商品を持った人たちがずらりと並び、Sさんたちスタッフはレジ対応に追われながら、空いた時間にせっせと品出しや商品整理をしなければなりません。
「ごめんSさん、今日はちょっと残業お願い!」
「は、はい…!」
4時間の勤務時間を過ぎてもレジを離れることができず、店長にいわれて残業することが増えてきました。まだ子どものいないSさんは時間に余裕があると思われて、特に店長から残業を頼まれることが多かったようです。

学生バイトが急に…

店が忙しくなると店長も社員もイライラしてしまい、八つ当たりされやすいのが学生バイト。パート主婦にはベテランが多かったのでご機嫌を損ねるわけにはいかなかったのでしょう。

社員たちは学生バイトたちにつらく当たることが増え、耐えかねたのかついにある日一斉に10人ほどの学生バイトが「もう辞めます」と電話をかけてきて、そのまま来なくなってしまったのです。

「ちょっと…ヤバくない?この状況…」
どんどんお客様は増えるのにスタッフが足りず、普段残業をしない主婦パートですら残業を頼まれたり、休みの日の出勤を要請する電話がかかってくる毎日。気づけばSさんは週に12時間の契約のはずが、フルタイム並みの40時間働かされる事態になってしまいました。

しかも人手が足りなさすぎるため、労働基準法で定められている休憩時間すらろくに取れない状況に。

「もう無理…誰かバイト募集してよ!」
ベテラン主婦がそう言ったものの、自分たちがつらく当たって学生バイトが辞めたことを本部に隠したい社員たちはなんとか残ったメンバーでカバーしようと知らんぷり。ついには積み重なる激務で精神を病んでしまい、ある日突然来なくなる社員も出る始末でした。
「何なのよもう!?このままじゃ開店もできないじゃん!」
店舗の鍵を持っている社員が出社拒否をして、遅番であるはずの店長が寝ぐせのついた髪もそのままに店の鍵を開けに来ることもありました。

とうとう本部から監査が

そんな忙しい日々が続いたある日のこと。突然店にビシッとスーツを着込んだ男性たちが5人ほど来店しました。
「本部の者です。店長室へ案内してください」
そう言われ、Sさんが驚きつつも店長室へ彼らを案内しました。
「ちょっとあれ、監査の人じゃない!?」とざわつくスタッフたち。

後ほど店長から事情説明があり、契約時間を超過しているパートが多すぎること、学生バイトが一斉に辞めたことが全部本部にバレてしまい、とうとう本部の監査部が事情聴取に来たというのです。

結果的に、何人ものバイトや社員を退職させてしまった責任をとって店長は降格。普通の社員として地方の店に異動を言い渡され、新しい学生バイトが大量に採用されたとのこと。Sさんも勤務時間が契約時間通りに戻されたそうです。

最初から正直に申告して新しくバイトを採用していればこんなことにならなかったはずです。そもそも学生バイトにつらく当たるのも良くないですよね。店長という、人の上に立つような立場の人間の、資質や人格も問われる出来事でした。ちなみに本部にチクったのは労働基準法に詳しいSさんの旦那さんだったことは誰にも秘密にしているそうです。

ftnコラムニスト:緑子

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