2026-27年秋冬のファッショントレンドはこれまで以上に選択肢が広がってきました。クラシックやユニフォーム、ロマンティック、カラフルなど、まとまりを欠くと見えるほどですが、この拡散ぶりにこそ、今のトレンドが映し出されています。今回は人気の東京ブランドが発表したランウェイコレクションを手がかりに、注目の6トレンドを先取りリポートします。

キーワード1)
クラシカルモダン チェック柄がリバイバル

画像: FETICO 2026年春夏コレクション 出典:フェティコ

FETICO 2026年春夏コレクション

出典:フェティコ

ブリティッシュな装いの再評価が進んでいます。背景にあるのは、タイムレスへの接近。時を経た品格をまといたいという意識です。伝統的なチェック柄のリバイバルは象徴的な動き。単なる復古ではなく、モダンにねじる返すようなアプローチが目立ちます。

【FETICO(フェティコ)】は「フェティッシュ」に由来するブランド名です。デザイナーの舟山瑛美氏は今シーズンは、「The Contours of Grace(気品の輪郭)」をテーマに選んで、優美さと凜々しさを響き合わせました。

大ぶりのウインドーペイン柄で、パンツ・セットアップを仕立てました。ロング丈の羽織り物が凜々しいムード。シャツには別のチェック柄を迎え、ボウタイ・リボンやバレエシューズでフェミニンを薫らせ、英国調をモダンに表現しました。

キーワード2)
ユニフォームラグジュアリー 定番ウエアをリュクスに

画像: TANAKA 2026年春夏コレクション 出典:タナカ

TANAKA 2026年春夏コレクション

出典:タナカ

まるで「制服」のように見慣れたウエアを、ラグジュアリーに仕上げる提案が広がってきました。ミリタリーアイテムやデニムウエアなど、特有のイメージを持つ装いにリュクス感をまとわせるアレンジです。

【TANAKA(タナカ)】はニューヨークを拠点に活動をするデザイナー、タナカサヨリ氏が2017年に立ち上げたブランドです。日本の職人技術を生かしたジャパンデニムを軸に、長く愛される服づくりを追求しています。2026-27年秋冬コレクションでは、「Blue Print(青写真)」をテーマに掲げました。

ミリタリー由来のトレンチコートと、ストリート服の代名詞的なデニムパンツを交わらせました。コートは首と肩にムートン調のリッチなディテールを重ねています。デニムには丁寧な加工を施し、細ベルトを巻きました。紳士靴ライクな革靴で「きちんと感」も添えています。

キーワード3)
カラフルレイヤード 色を多彩に重ね着

画像: kotohayokozawa 2026年春夏コレクション 出典:コトハヨコザワ

kotohayokozawa 2026年春夏コレクション

出典:コトハヨコザワ

秋冬はレイヤード(重ね着)が着こなしの軸になる季節です。暖かい日が通年で続くようになって、レイヤードは軽やかな表情を深くしています。ポジティブな色や柄を交差させるのも、新レイヤードの傾向です。多彩なカラーとモチーフのクロスオーバーが秋冬ルックだけでなく、着る人の気持ちも弾ませます。

【kotohayokozawa(コトハヨコザワ)】は横澤琴葉デザイナーが2015年にスタートさせました。型にはまらない、しなやかなまなざしが持ち味。時代やトレンド、ジェンダーにとらわれないオープンマインドなクリエーションも魅力です。2026-27年秋冬コレクションでは東京・西新宿の街から着想を得て、重層的なカラーミックスで高揚感を引き出しました。

シアーな長袖ニットトップスに、半袖Tシャツを重ね、襟周りにはスカーフをオン。ボトムスはスカートにスカートをレイヤード。色や柄が複雑に交差して、朗らかな景色を生みました。足元はビーチサンダル風で、シーズンレスの装いに整えました。

キーワード4)
ファニーフェイス ディテールにウィット

画像: pillings 2026年春夏コレクション 出典:ピリングス

pillings 2026年春夏コレクション

出典:ピリングス

装いにユーモラスな雰囲気やウィットフルな仕掛けを盛り込む提案が増えてきました。単なる「ウエア」ではなく、人物像を示し、気持ちを和ませるといった役割を服に託す試みです。先の見通しにくい世の中を背景に、ファッションで空気感をファニーに変えたいといった意識が支持の裏側にあるようです。

【pillings(ピリングス)】はハンドニットの表現力で知られるブランドです。デザイナーの村上亮太氏は世界規模のコンテスト「LVMHプライズ」で2025年のセミファイナリストに選ばれました。繊維を絡ませて縮める「縮絨」をはじめ、起伏に富んだニットならでは風合いでオンリーワンの表情を宿らせています。

2026-27年秋冬コレクションでは「ランドスケープス」をテーマに選んで、日常とファンタジーがない交ぜになったかのようなムードを醸し出しました。ボタンを掛け違えたかのように見えるニットカーディガンは、実際にボタンをずらして留めたユニークな仕掛け。身頃の片方だけにドレープが施され、アシンメトリーな表情を描きます。パンツも腰周りに立体感を持たせ、全体にねじれたような不思議なシルエットを漂わせました。

キーワード5)
ロマンティックハンサム 甘さとマニッシュの共振

画像: HOUGA 2026年春夏コレクション 出典:ホウガ

HOUGA 2026年春夏コレクション

出典:ホウガ

性別にとらわれない「ジェンダーレス」に、ロマンティック感とハンサムムードが加わりました。甘さとマニッシュが互いを引き立て合うような関係。芯の強さをまといたいという意識が背景にあるようです。テイストの折り合いをつけすぎないスタイリングも今のトレンドです。

【HOUGA(ホウガ)】は石田萌氏が2019年春夏シーズンからスタートさせました。ブランド名は芽生えや兆しを意味する「萌芽」に由来。美術史を専門的に学んだデザイナーならではのアート性の高いクリエーションが強みです。

2026-27年秋冬コレクションでは「ourplayground」をテーマに据えて、自由度の高い、演劇的な雰囲気を帯びた装いを打ち出しました。トップスは両袖にチュールフリルをどっさりあしらって、ロマンティックに華やがせました。襟元にもコサージュ風のフラワーモチーフをプラス。チェック柄のパンツはマニッシュなたたずまい。上下で相反するジェンダー感をねじり合わせ、甘さと凜々しさを共存させています。

キーワード6)
フリクションハーモニー 摩擦と調和

画像: tiit tokyo 2026年春夏コレクション 出典:ティート トウキョウ

tiit tokyo 2026年春夏コレクション

出典:ティート トウキョウ

装いのルールをあえて踏み越えるようなスタイリングが試され始めました。違和感や摩擦、ノイズをコーディネートに持ち込んで、「こなれ感」の先を狙うアレンジ。異なるテイストのぶつかり合いが不思議な調和を生む、遊び心に富んだ着こなしです。

【tiit tokyo(ティート トウキョウ)】は岩田翔氏と滝澤裕史氏が2011年に立ち上げたブランドです。コンセプトは「日常に描く夢」。洗練された叙情的テイストが支持されています。繊細な色使いや多彩な素材使いも、着る人それぞれの「らしさ」を引き出します。

2026-27年秋冬コレクションでは1960年代のアメリカ人女優、ミムジー・ファーマーが主演した映画『MORE/モア』から着想を得て、インディペンデントな女性像を描き出しました。レースのラガーシャツ風トップスに、しわの入ったジャケットを重ねました。ボトムスはサイドライン入りトラックパンツにレースのスカートをレイヤード。キャップは飾りがいっぱい。カオス気味のユーモラスなミックスコーディネートに整えました。

トレンドは自由に「つまみ食い」する時代へ

2026-27年秋冬は、異なる方向性のトレンドが入り乱れるシーズンです。好きなテイストやスタイリングを自由に選び取れる今、気持ちが上がるトレンドを「つまみ食い」するのが新しい流儀。自分好みのコーディネートを楽しんでみましょう。

ファッションジャーナリスト 宮田理江

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