芸能事務所になんとか息子を入れようと奮闘するB子と、街を歩けばすぐにスカウトされるハーフの息子を持つA子。出会わないで欲しい2人の友人に翻弄されたお話です。
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絶対詐欺だよ

私の友人A子にはアメリカ人の夫がいます。A子の息子はまるでお人形さんのようにめちゃくちゃかわいいので、都会を歩くとよくスカウトされるそう。その日も私と一緒に買い物に出かけた時、芸能事務所の人からスカウトされました。

数日後、別の友人B子をランチに出かけたときに、そのことをB子に話したら、

「そんなの絶対詐欺だよ」
「絶対騙されてる」
などと、スカウトの話を全力で否定してきました。

ただの世間話なのに、なんでそこまで否定的なんだろうと私は困ってしまいました。

嫉妬と野望のはざまで

実は、後から知った話なのですが、B子は息子を子役としてデビューさせるために、数々の芸能事務所の子役オーディションを受けていたのです。しかし、すべてのオーディションに落選していたのでした。

そんなことは、全く知らなかった私は、

「A子の息子は街を歩くと、振り向いたり声をかけられたりすることも多いんだよ。」と話を続けます。事務所とは関係のない話に変えようとしたのです。
しかし、B子は、

「だいたいハーフなんてずるい」
「日本語が話せないと、子役とか無理」

私が「A子は芸能事務所に入れるか決めたわけではないよ。迷っているらしいからね。」というと、

「わー嫌だ。なにそれ」
「ちなみにどこの事務所よ」

というので事務所名を伝えると、顔を真っ赤にして鬼の形相で怒り狂い始めました。
子役の事務所では大手のところだったようです。

「なんだこれ! こんなの絶対詐欺じゃん」
「嘘に決まってる! この事務所はオーディションを通過しないとダメだから」
「スカウトしたやつが事務所サイドの人間かも疑わしいわ!」
など、驚くほど否定的なことばかり言い出したのです。

スカウトを断ることにしたA子

なぜそんなに怒るのか分からず、安易にスカウトのことを話題にしなければよかったと後悔する私。するとそこへ偶然A子が! しかも息子を連れて。屋外の席だったので、A子が近づいてきました。A子は私にこう告げました。

「私、息子ちゃんのスカウト、断るわ」
「アメリカに住むことになったから、日本で仕事できなくなっちゃってさー」

B子は般若のような表情で、

「はぁ? 断る!? なんなの? 信じられないわ!!」と怒りを露わにしたのです。
「顔がちょっといいだけで、調子に乗りすぎじゃない?」と暴言は続きます。

びっくりしてB子を見るA子。それもそのはず。全くの部外者がいきなり怒りだしたのですから。

驚いて固まってしまった私とA子。B子はA子を睨みつけたままチッと舌打ちし、食事代金を乱暴にテーブルに置くと、店を出て行ってしまいました。
私はA子の言動が理解できず、恐ろしすぎて固まってしまいました。

後日、別のママ友にB子がオーディションを受けまくっていることを教えてもらいます。あれは嫉妬だったのか……と納得できました。それにしても酷い態度だったなと思いました。
知らなかったとはいえ、私はスカウトのことをB子に話してしまったことをA子に謝罪しました。A子は、「ただの世間話だから問題ないよ。おかしいのはB子だから。」と許してくれました。

自分の息子が可愛いのはわかりますが、八つ当たりはいけませんね。

ltnライター:鈴木まさ美

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