「な、何これェェ！？」【家のポストに食べかけの饅頭】！？ → 私「犯人を捕まえてやる！！」

隣人は同年代の夫婦

Eさんは当時新興住宅地に一軒家を購入し、引っ越したばかり。

慣れない土地でしたが、持ち前の明るさと、周りに同年代の家庭が多かったことから、すぐに何人かママ友を作ることができました。

ある日、Eさんが引っ越してきたときはまだ空き家だった隣りの家に、Eさんと同年代の夫婦が引っ越してきました。

「Sと申します。どうぞよろしくお願いします」
挨拶に来たSさん夫婦は2人とも大人しそうな雰囲気で、子どもも恥ずかしがり屋なのか母親の後ろに隠れてしまいました。
「Eです。うちにも同じくらいの子どもがいるので、仲良くしてくださいね」
Eさんがそう言うと、Sさん夫婦はほっとしたような表情を浮かべました。

謎の食べかけ饅頭

「あれ、何これ…… 」
Sさん夫婦が挨拶に来てから数日後、Eさんは家のポストにラップにくるまれたお饅頭のようなものがひとつ入っているのを見つけました。
「お饅頭……しかも食べかけ？」
それはよく旅先のお土産屋さんで売っているような薄皮饅頭で、何個かくっついていたのを剥がしたのか、ところどころ皮が破れてあんこがはみ出しています。
それは明らかに誰かが食べかけのお饅頭をラップにくるんで入れた、といった様子。
「なんかやだな…… 」
誰が入れたのかもわからないので、もったいないとは思いながらもEさんはそのお饅頭を捨ててしまいました。

そしてまた数日後、Eさんはまたポストにラップでくるまれた何かが入っているのを見つけました。
取り出してみるとそれは数枚のクッキー、しかも手作りのものでした。
「今度はクッキー？ 一体誰が……」
子どものイタズラかもしれないと思い、Eさんは自分の子どもやママ友たちに確認してみるも、誰も全く心当たりがない様子。
「なんなんだろう、気持ち悪い……」
それから数回、ポストにお菓子が入れられているのを発見したEさんは、自分の家のポストを陰から見張ることにしました。

ポストにお菓子を入れたのは……

Eさんは向かいの家の人に頼んで門の陰に隠れさせてもらい、そこから自分の家のポストを見張ることに。

大体お菓子が入れられるのは平日の午後2時~4時くらいだと検討をつけ、Eさんは数日張り込みをしました。

「今日こそはとっつかまえてやる！」
そう意気込んだEさんの目に、ひとりの女性が飛び込んできました。
「あれ……？」
その女性は手に何かを持っていて、インターホンも押さずにそれをEさんの家のポストに押し込んでいます。

「ちょ、ちょっと！」
Eさんは向かいの家から飛び出し、その女性に声をかけました。
「Sさん！ あなたがお菓子を入れてたの！？」
そう、その女性は最近引っ越してきたばかりの隣人、Sさんだったのです。

「あの……私…… 」
Sさんは家にいるはずのEさんが後ろからやってきたことに驚いたのか、わっと泣き出してしまいました。
「泣いてないで、なんでお菓子入れたのか教えてよ…… 」
EさんはとりあえずSさんを自分の家に上げ、ポストにお菓子を入れていた理由を聞きました。

仲良くなるためには……

「私、Eさんと仲良くなりたかったんです。でもどうすれば仲良くなれるかわからなくて…… 」
Sさんが泣き止むのを待って聞いてみたところ、どうやらSさんは人付き合いが苦手で、今までご近所さんのトラブルなどもあり、住む場所を転々としていたとのこと。

ただ今回はペットが飼える家に住みたいと旦那さんと子どもの要望が強く、一軒家を買ってしまったので、何が何でもご近所さんとうまくやっていかなければと思ったSさん。

しかしどうやって仲良くなったらいいかわからないため、とりあえずお菓子を渡そうと思ったものの、インターホンを押して直接渡す勇気はなく、ポストに入れてしまったというのです。
「うーん…… とりあえず誰かと仲良くなりたい時は、食べかけ饅頭はやめよっか」
「はい、すみません…… 」
「あとね、ちゃんとインターホン押して渡して！ じゃなきゃ誰からかわからなくて食べ物を粗末にしちゃうことになるから」
「はい…… 」

Eさんは内気すぎるくらい内気なSさんに、ご近所さんと一定の距離を置いて付き合う方法についてみっちり教え込むことにしました。
「べったり付き合うとしんどくなっちゃうから、まずは挨拶と軽い立ち話から始めよう！」
「はい！ 先生！」

その後SさんはEさんの助けもあって少しずつご近所に馴染めるようになり、今では気の合うママ友もできたとのことです。

子どもの頃とは違い、大人になると誰かと仲良くなるのはなかなか難しいものですね。もちろん食べかけ饅頭プレゼントは絶対にやめましょう。

ltnライター：緑子