有名人によく会う仕事をしている人は、周りの人から「羨ましい」「芸能人に会えるなんてずるい」と言われることがあるそうです。あくまで仕事だということを忘れられているのでしょう。
今回は仕事で芸能人に会ったらえらいことに巻き込まれてしまった私の先輩、Mさんのお話です。
画像: ftnews.jp
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戦隊ヒーロー俳優にインタビュー

Mさんは芸能系ライターで、芸能人のインタビュー記事をよく書いています。

その時は人気急上昇中の、戦隊ヒーロー出身の俳優さんにインタビューをした記事が公開されたばかりでした。

Mさんが家族とゆっくり過ごしていた週末の朝、Mさんの家のインターホンが連打されました。
「はい……?」
出てみると、Mさんの子どもと同じ小学校に通う子を持つママ友のひとりが目をキラキラさせ、Mさんが記事を書いた雑誌を手に立っていました。

「ちょっとMさん! これ書いたのあなたでしょ、すごいわ!〇〇(戦隊ヒーロー俳優)に会ったの? どうだった、やっぱりイケメン? 連絡先とか交換したの?」
「はあ……?」
「私大ファンなの、今度会ったらサイン貰ってよ! ていうか生で会わせて! 一目だけでいいから!」

ママ友のあまりの勢いに、Mさんは「仕事で会っただけだから無理です」としか言えませんでした。

ママ友のお願い

それからというもの、そのママ友は毎日のように、決まって早朝にMさんの家を訪ねてくるようになりました。
「ねえ、サインだけでもお願いできない? 私デビュー当時からずっと応援してるのよ、にわかファンじゃないの。お願い、お願いー!」
「……無理ですよ、取材ももう終わったし」
Mさんが書いた記事は、〇〇が主演した映画の内容や見どころについてを取材したものでした。雑誌が発行され、その映画も公開された今、Mさんがその俳優さんに会うことはありません。
「じゃあどうしたら〇〇に取材できるか考えて、編集部に持ち込めばいいじゃない! ね、私って頭いい!」
「いやいや、他の仕事もあるんでそういった個人的なお話はちょっと」
「なんでよー、ケチ! 全然使えないわね、芸能ライターなんて!」
そんな捨て台詞を吐かれ、Mさんは思わずぽかんとしてしまいました。

ニセの取材依頼!?

ママ友が来なくなってから、Mさんは他のママ友から例のママ友のあまり良くない噂をよく耳にするようになりました。

どうやら彼女には思い込みの激しいところや、過剰に人を頼りすぎるところがあるようです。
「うちに来た時もすごかったもんなー、まあ諦めてくれて良かった」
Mさんがほっとしたのもつかの間。8割がた在宅仕事のはずなのに、Mさんはいきなり雑誌の編集部から呼び出されることになったのでした。

「あなた、〇〇の事務所に取材依頼した?」
編集長から突然そう言われ、Mさんは慌てて否定しました。
「〇〇のインタビュー記事は終わったし、そもそも私が勝手に取材申し込むことはないですけど……」
「そうよねえ、おかしいな」
「どうしたんですか?」
「〇〇の事務所にあなたの名前とうちの雑誌の名前を騙って、取材依頼を取り付けようとした人がいるみたいなの」
「ええー!?」
そこで真っ先に頭に浮かんだのが、例のママ友でした。
「まあ向こうもイタズラですかね、って済ませてくれたから良かったけど」
「すみません、ほんと……」

Mさんはママ友の旦那さんが帰宅する時間を見計らい、今度はMさんの方からママ友の家に突撃しました。

「……こんな時間に何か?」
Mさんは怪訝そうな顔で玄関に出てきたママ友の旦那さんに、ママ友が何度も〇〇に会わせろと言ってきたことや、ニセの取材依頼までとりつけようとしたことまで全て話しました。
「嘘よ、全部でたらめ!」
ママ友はそう言って大騒ぎしましたが、もうすでに旦那さんのところには他のママ友からの訴えが沢山届いていたのでしょう。

ママ友の言うことにはまるで聞く耳を持たず、Mさんには「ご迷惑をおかけしました、もう2度と同じことはさせません」と深々と頭を下げて謝罪してくれました。

それからというもの、そのママ友はすっかりおとなしくなり、Mさんと近所や小学校で顔を合わせると、挨拶もそこそこに慌てて通り過ぎるようになったそうです。
その俳優さんが好きな気持ちはわかりますが、公私混同はできませんよね。

ftnコラムニスト:緑子

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