これは、私がまだ新米看護師だったときのお話です。
初めての夜勤中、誰も入院していないはずの個室から鳴り響くナースコール。誰も出ようとしないので自分が見に行こうとすると、先輩にすごい剣幕で止められました。
怒ったことのない先輩が、なぜこんなにも焦っているのか。その理由は、その後の夜勤が怖くて仕方がなくなってしまうほどのものでした……。
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必ず同じ曜日の同じ時間に3回ナースコールが鳴る部屋

私は、普段怒らない先輩が何やら焦った様子なことを疑問に思い「どうしてですか? 」と聞きました。私が勤務している病棟は認知症の患者さんも多く、夜中に徘徊してしまう人もいます。もしかしたら、誰かが個室に入り込んでしまったのかもしれません。それはそれで怖いのですが。

それに、空室からナースコールがあるのは昼間でも同じこと。機械なので誤作動があるのは当たり前です。看護師として、様子を見に行くのは当たり前だと思っていました。
先輩は、「他の部屋だったら見に行って欲しいんだけど、あの部屋のこの曜日のこの時間はダメなの」と言います。

先輩によると、毎週金曜日の午前3時ごろ、必ず3回同じ部屋からナースコールが鳴るそうです。その部屋は413号室。ナースステーションから1番離れている個室なので、普段からあまり入院する患者がいない部屋です。

その部屋で過去にあった事件とは……

私が働いている病棟は、手首の血管をつなぎ合わせる手術をする患者さんがたくさん入院しています。なぜその手術を受けるのかというと、透析治療を受けるため。その手術を受けると血流が良くなりすぎてしまうことがあり、手首の血管がうねうねと浮き出てきてしまうことがあります。

10年ほど前、413号室にはとても綺麗な40歳ほどの女性が入院していました。そして血管の手術を受け、傷口が落ち着くまで経過を見る予定でした。
しかし、整形や美容に関してはとても気を遣っていた彼女は、「自分の腕がうねうねと血管が浮き出るようになったらどうしよう」と嘆いていました。傷口をみては泣いていたそうです。

そして彼女は金曜の明け方、手術した方の腕を切って自殺しました。家族に「前髪を切りたいからハサミを持ってきて」と頼んでいたハサミを使って。
血流の良い血管を切ったのですから、当然失血死で明け方の巡視の際に発見されました。
ベッドに横たわっていた彼女は眠っているようでしたが、布団や病衣、ベッドの下にも血液がこびりついていて、言葉通りの血の海だったそうです。

その日から鳴り続けるナースコールは助けを求めていたのか

もちろんお札を貼ったりお祓いをしたり、できることはしたそうです。
しかし、彼女が亡くなったとされる推定時刻の3時ごろ、ナースコールは鳴り続けました。
彼女が亡くなったとき、ナースコールには引っ掻いたような血痕が残されていました。死ぬのが怖くなり、助けを呼ぼうとしたのでしょう。
あのとき鳴らすことができなかったナースコールを、今でも鳴らし続けているのです。

「だから、この時間の413からのナースコールは出ちゃダメだからね」と先輩は明るく話してくれましたが、私はもうその日から413号室の前を通れなくなりました。
幸いその部屋に入院する患者さんはいませんでしたが、私が退職するまでナースコールが止む事はありませんでした。

ftnコラムニスト:うしさん

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