体型が変わり始めて、カジュアルなファッションが似合わなくなった。でも、いわゆるミセスブランドでは気に入る洋服が見つからない。そんなファッション難民になりがちな30代後半〜40代の女性から支持を得ているのが【カオス】です。ディレクターを務める櫛部美佐子さん自身も40代のため、リアルなニーズを反映できるのが人気の秘密。定番人気を誇るモデルや新しく始めた取り組みなどを櫛部さんにうかがいました。

丸みを帯び始めた大人の体型をシャープに見せる服作り

パッと目を引くプリントではなく、質感やシルエットを絶妙にコントロールし、印象的に仕上げる【カオス】の洋服。デザインするうえで大切にしているのは、素材とシルエットだと櫛部さんは話します。
「素材フェチなので、まず素材から。トレンドに合う色であれば、染めずにそのままの色を生かすのが好きですね。サスティナブルは謳っていませんが染色すると汚染されますから、できるだけ考慮しています」(櫛部さん)

画像: 素材本来の表情を生かす日本のストールブランド【スロー】に別注したストール¥42,900 リネンの素材感を生かし、本来は破棄する植物で草木染めに。 出典:カオス

素材本来の表情を生かす日本のストールブランド【スロー】に別注したストール¥42,900 リネンの素材感を生かし、本来は破棄する植物で草木染めに。

「私も40代になって、いろいろわがままになってきているから(笑)、単純に可愛いとか、かっこいいだけじゃ満足できなくなってきて」と笑う櫛部さんがこだわるのが、丸みを帯び始めた体型でもシャープに見えるシルエット。
「ジャケットは肩のラインが四角く出るようにしたり、バックスタイルが美しく見えるようにしたり。パンツやスカートは、お腹が出ているようには見えないパターンにしています。日本人は前ももが張りがちなので、パンツは脚がまっすぐ見えるようにしていますね」(櫛部さん)

画像: 肩のラインがシャープに出たオンソンダブルジャケット¥92,400、ヒールのあるシューズと合わせることを想定してデザインされたソクショウパンツ¥38,500 出典:カオス

肩のラインがシャープに出たオンソンダブルジャケット¥92,400、ヒールのあるシューズと合わせることを想定してデザインされたソクショウパンツ¥38,500

直線的なシルエットだと窮屈な着心地を想像しますが、その点もこのようにクリア。
「かっちり見えても、ゆとりがあって着やすい、が一つの目標地点。直線的でもパターンにゆとりをもたせたり、アームホールの位置を工夫するなどして、着やすいようにしています」(櫛部さん)

できるだけむだを省くため、セールをしない取り組みを開始

最近は新たな取り組みも始めています。その一つが展示会の回数。一般的にアパレルの展示会は、大きくわけて春夏と秋冬シーズンの年に2回。店頭に並ぶ半年ほど前に開催し、メディア関係者や顧客にいち早く新作をお披露目します。それを【カオス】では春・夏・秋・冬それぞれのシーズン、年4回行うことに。

画像: 【カオス】ディレクターの櫛部美佐子さん 出典:カオス

【カオス】ディレクターの櫛部美佐子さん

「【カオス】は真夏から冬のコートを予約してくださる熱心な顧客様が多いんです。一方でオンシーズンのアイテムのニーズも高く、もっと喜んでもらえる取り組みができないだろうか、と実需に近づけた展示会サイクルを前々から考えていました」(櫛部さん)

新作の「シルクコンニット」シリーズ。ストレッチ糸を加えた編地ながら、上品な雰囲気があるシルク混のハリのある素材を使用。左/シルクコンニットキャミソール¥17,600、シルクコンミラノリブパンツ¥28,600、左/シルクコンニットキャミソール¥17,600、シルクコンミラノリブタイトスカート¥27,500

そこで2020年から年4回の開催に。コロナ禍の影響で2020年は年3回になったものの、洋服を買い控える人が増えた風潮に反し、【カオス】では熱心な顧客がかなりサポートをしてくれたと櫛部さんは感激したそう。そこでますますニーズに合わせるため2021年は店頭に並ぶ2週間前に開催と、かなり実需に合わせた展示会サイクルを予定しています。

画像1: 【カオス】2021年初夏シーズのイメージビジュアル 出典:カオス

【カオス】2021年初夏シーズのイメージビジュアル

「これまではオリジナルアイテムを春夏・秋冬で各80型ずつほど作っていたのを、春・夏・秋・冬で各40型くらいにしました。点数は大幅に変わりませんが、サイクルが細かくなるのでスタッフには無理をお願いしていますが。ただ顧客様にとっては季節に合ったリアルにほしい商品に出合えるので、新しい展示会の形としておもしろいかなと思います」(櫛部さん)

画像: 厚手シルクサテンに限界までサンドウォッシュをかけ、非常に肌触りのいい軽い素材を使用したシルクフィブリルシリーズ。手洗いができるのも魅力。左/「シルクフィブリルTシャツ」¥26,400、右/「シルクフィブリルタンク」¥22,000 出典:カオス

厚手シルクサテンに限界までサンドウォッシュをかけ、非常に肌触りのいい軽い素材を使用したシルクフィブリルシリーズ。手洗いができるのも魅力。左/「シルクフィブリルTシャツ」¥26,400、右/「シルクフィブリルタンク」¥22,000

負担を増やしてまでも年4回の展示会に踏み切ったのは顧客への還元だけでなく、大量生産・大量消費にもNOをつきつけたかったから。もう一つの新たな取り組みが、できるだけセールをしないこと。
それは櫛部さんがフリーランスのディレクターやデザイナーとして、数多くのブランドを経験してきた経歴が関係しています。
「一生懸命デザインした服が、簡単にセール商品になったのを何度も経験しました。それがすごく嫌で。大量放棄って環境にやさしくないだけでなく、私達スタッフの思いがあっさり捨てられてしまうのが単純にすごく悲しいんですよ。売上のためにたくさん作らないといけないのは理解できますが、それがうまく消化できなくて。もうアパレルを離れようかなって、もやもやした思いを4〜5年くらい抱えていました」(櫛部さん)

【カオス】2021年初夏シーズのイメージビジュアル

悩んでいる最中に届いたのが【カオス】のディレクターの依頼。
「クローゼットに残してもらえるもの作りをしたい、セールをしなくていいビジネススタイルにしたいと、当初からお願いしていました」(櫛部さん)
アパレルに限らず売上が高いブランドはお店の数が多く、数がものをいう世界。展開サイクルを小刻みにし、セールをしないスタイルにするまで櫛部さん自身、何度も会社を説得しました。

画像: 左/たっぷりとしたシルエットがリラクシーなサンディングシルクワンピース¥53,900、右/ウエストのひもの結び方で履く位置を調整できるヴィスコースラップスカート¥30,800 出典:カオス

左/たっぷりとしたシルエットがリラクシーなサンディングシルクワンピース¥53,900、右/ウエストのひもの結び方で履く位置を調整できるヴィスコースラップスカート¥30,800

「【カオス】がデビューする際、会社からは規模の大きさが必要な、高い目標を掲げられて(笑)。アパレルはこうあるべきって考えもわかるけれど、時代は“ものを大切にする”流れに変わっていますよね、と何度も話をして」(櫛部さん)
ものを大切にするための取り組みの一つが、定番品を増やすこと。定番品であれば、次のシーズンも店頭に並べられ、廃棄に繋がりにくくなります。しかしトレンド重視の今のマーケットとは方向性がずれ、また在庫を抱えることになるため、当初会社はいい顔をしなかったそう。
「少しずつ継続品番に人気が集まるようになって、今はオリジナル商品のうち1割以上が継続品。売上における割合も増えてきています。結果が見えてきたから、会社も私達の方法に少しずつ理解を示してくれています」(櫛部さん)

画像: デビューシーズンから継続して人気の高い「アームレットTシャツ」¥9,350 きれいめに着られる素材とデザインで、大人から支持を得ています。 出典:カオス

デビューシーズンから継続して人気の高い「アームレットTシャツ」¥9,350 きれいめに着られる素材とデザインで、大人から支持を得ています。

規模の拡大より、顧客ニーズに合わせてブランドを成長させていきたい

現在【カオス】の実店舗は国内で6店。今後店舗数を増やす予定はあるのでしょうか?
「6店くらいがちょうどいい規模だと思っています。もっと認知度を高めなければいけないですが、マスになりすぎると表現したいことにも制限がかかりますし、生産面でのむだも増えます。また、コロナ禍でEコマースの便利さも改めて実感して。Eコマースが充実すれば、お店のない地域の人にも買いやすくなりますもんね」(櫛部さん)

画像3: 【カオス】2021年初夏シーズのイメージビジュアル 出典:カオス

【カオス】2021年初夏シーズのイメージビジュアル

店舗数を絞るからこそ、店1つ1つへ櫛部さんの目が行き届き、自然と1店あたりの熱量も高まります。
「この広さだったら、商品点数はこのぐらい必要ってセオリーはありますが、面積を埋めるための商品構成も疑問で。人気のある品番に絞るとか、完売したら新しい商品を入れて回転させていくとか、本音はニーズのある商品や自分が置きたい商品だけを並べたい。そうすれば、少しずつむだも省けるでしょうし。顧客様にとってもいいお店作りはできないかなって模索中です」(櫛部さん)

画像4: 【カオス】2021年初夏シーズのイメージビジュアル 出典:カオス

【カオス】2021年初夏シーズのイメージビジュアル

最後に今後【カオス】をどのようなブランドにしていきたいか、尋ねました。
「無理をせず等身大でほしいものを作っていきたい、という感じです。顧客様も同じような気分でしょうし、それがいいのかなって。ブランドは顧客様と一緒に成長していくもの。お客様の声と自分の心の声に耳を傾けながら、長く愛されるブランドになれば、と願っています」(櫛部さん)

※価格はすべて税込です。

Writer:津島千佳

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