筆者の知人C子は、単身赴任の夫と週末だけ顔を合わせる生活が20年近く続いています。最初は寂しさもありました。でもいつの間にか、平日の静けさが心地よくなっていました。定年が近づき、夫が「帰ったらあれもしたい」と話すたび、笑顔で相槌を打ちながら心の中では全く別のことを考えています。「来ないで」とは言えない、でも正直に言えば、それに近い——そんな本音を抱えたC子の話です。
夫はあと数年で定年を迎えます。
最近、週末に帰ってくるたびに「定年したら一緒に旅行しようか」「家庭菜園でもやってみたいな」と話すようになりました。私は笑顔で「いいね」と相槌を打ちます。
でも心の中では、全く別のことを考えています。
毎日ここにいるの? 朝も昼も夜も?
「来ないで」とは言えない
罪悪感はあります。20年間、文句ひとつ言わずに働いて、生活費を送り続けてくれた夫。
子どもたちの行事には、新幹線で駆けつけてくれました。悪い人では、まったくありません。
ただ、正直に言えばこういうことです。
週一の「おかえり」が、ちょうどいい。
「ずっと一緒にいたい」という気持ちが、今の私にはありません。
それは夫への愛情が冷めたのではなく、20年かけて完成した「自分のペース」があるからだと思っています。でもそれを夫に言える日は、たぶん来ません。
定年まであと少し。私は今日も、心の準備ができないまま「おかえり」と言う練習をしています。
【体験者:50代・女性・主婦、回答時期:2026年5月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:K.Matsubara
15年間、保育士として200組以上の親子と向き合ってきた経験を持つ専業主婦ライター。日々の連絡帳やお便りを通して培った、情景が浮かぶ文章を得意としている。
子育てや保育の現場で見てきたリアルな声、そして自身や友人知人の経験をもとに、同じように悩んだり感じたりする人々に寄り添う記事を執筆中。ママ友との関係や日々の暮らしに関するテーマも得意。読者に共感と小さなヒントを届けられるよう、心を込めて言葉を紡いでいる。