これは友人A子から聞いた話です。不機嫌な態度ばかりで家族に気を遣わせていた父。ある日「もう来なくていい」と言われたA子は、本当に実家へ行くのをやめます。しかし距離ができたことで、不器用な親子関係が少しずつ変わっていくエピソードです。

実家はいつも“父中心”だった

A子の父は、とにかくいつも不機嫌な人でした。
仕事で疲れている。家では静かにしたい。
自分のペースを乱されたくない。
その空気が家中のルールになっていました。
テレビの音量、食事の時間、会話のタイミング。
全て“父が基準”となり、母も兄弟も、自然と顔色をうかがって生活していました。

大人になっても続いていた父への気遣い

結婚して家を出てからも、それは変わりませんでした。
実家へ帰れば、「そんな頻繁に来なくていい」などと文句ばかり。
でも行かなければ行かないで、「親を放ってる」と言われるのをA子は知っていました。

そのような微妙な空気感のなかで、A子はずっと、父との“ちょうどいい距離”を探し続けていたのです。

孫にまで向いた“無愛想”

A子に子どもが生まれても、父は変わりませんでした。
孫が話しかけても、「うるさいな、じっとしてろ」そんな返事ばかり。
そして帰宅後、子どもがぽつりと言ったのです。

「じいじ、ぼくのこと嫌いなの?」
その言葉が、胸に刺さりました。

ある日訪れた実家で、父はまた不機嫌そうに言いました。
「そんな無理して来なくていい」
A子はこれがいつもの嫌味と分かっていましたが、その日、初めて言葉をそのまま受け取ったのです。
「分かった。じゃあしばらく来ないね」
父は一瞬黙りましたが、きっとまた、“どうせ来るだろう”と思っていたのでしょう。

本当に来なくなった娘

A子が実家へ行くのをやめて数ヶ月経った頃。
母が電話で、父が休みの日になると「今日はA子達は来ないのか」と何度も聞いてくるのだと言うのです。
そしてある日、遂に父本人からぶっきらぼうな声で電話が来ました。
「最近来ないな」

「来なくていいって言ったから」