「石の上にも三年」という言葉は、かつては忍耐を尊ぶ美徳として語られてきました。しかし、自分自身をすり減らして、無理を続けた先で壊れてしまったら、立て直すには想像以上の時間がかかります。今回は、筆者の友人の体験談をお届けします。

駅のホームで気づいた限界

しかし、ある朝ホームで電車を待っていたときのこと。
「このまま踏み出せば会社に行かなくて済む」という危険な考えが、ふっと頭をよぎりました。

自分で自分にゾッとして、それでようやく「私、もうかなり危ないかもしれない……」と、心が限界を迎えていたことに気づいたのです。

あのときの恐怖と動揺は、今でも鮮明に思い出せます。

勇気ある撤退

結局、私は2年目でその会社を退職しました。

辞めた直後は、平日の昼間に外を歩くだけで罪悪感がありました。
同期が働いている時間に、自分だけ社会から落ちこぼれた気がしていたのです。

当時の私は、「自分は根気のない駄目な人間なんだ」と、本気で思っていました。
でも、もし今の私が過去の自分に会えるなら、「お願いだから今すぐ辞めて!」と言い、震えているその手を引いて迷わず会社から連れ出したい。

「逃げてもいいんだよ。まずは生き延びることのほうが大事だから」と抱きしめて伝えたいのです。

逃げたから今がある

あれから20年以上経った今、ようやく思えることがあります。
周囲がどれだけ無責任なことを言っても、彼らは私の人生の責任など取ってくれません。

壊れてしまった心を取り戻すには、何年もの時間と労力がかかります。
私はあの挫折を経て、自分の心に嘘をつかない働き方を選ぶようになりました。

世間の“普通”より、自分のSOSをちゃんと信じること。
今でも、あのとき辞めた判断は間違っていなかったと思っています。

今の自分があるのは、あのとき勇気を出して「逃げた」おかげなのです。

【体験者:40代・女性会社員、回答時期:2026年5月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

FTNコラムニスト:藍沢ゆきの
元OL。出産を機に、育休取得の難しさやワーキングマザーの生き辛さに疑問を持ち、問題提起したいとライターに転身。以来恋愛や人間関係に関するコラムをこれまでに1000本以上執筆するフリーライター。日々フィールドワークやリモートインタビューで女性の人生に関する喜怒哀楽を取材。記事にしている。