病院で働く看護師は、患者さんの対応だけでなく、記録や確認作業など“見えない仕事”にも追われています。しかし、その忙しさは周囲から見えづらく、時には心ない言葉を向けられることもあります。今回は、急性期病棟で働いていた知人の看護師I美さんが、患者家族の一言に傷つきながらも、思わぬ形で救われた出来事をご紹介します。

患者さんのOさんの一喝で空気が一変

すると、そのやり取りを偶然聞いていた患者のOさんが、2人に対して突然強い口調でこう言いました。

「この子、朝からずっと動き回ってるぞ! 見てもないのに適当なこと言うたらあかん!」

ナースステーションの空気が一瞬で変わったそうです。

さらに患者さんは、ベテラン看護師に向かってこう続けました。

「ナースコール押しても来んの、いつもあんたやろ。若い子にばっかりやらせて恥ずかしないんか」

その場は静まり返り、家族もベテラン看護師も何も言い返せなくなりました。

後日、そのOさんの娘さんからは「看護師さんたちの本当の忙しさを知らず、軽率な言葉をかけてしまってごめんなさい」と謝罪があり、ベテラン看護師の態度についても病棟内で問題視されるようになったそうです。

見えているものだけが全てではない

Oさんの娘さんにとっては、何気ない冗談のつもりだったのかもしれません。

しかし、休む間もなく動き続け、ようやく座れた瞬間だったI美さんにとって、その言葉は深く突き刺さったそうです。

医療現場では、座っている時間も記録や確認作業など大切な業務の一つ。
外からは「暇そう」に見えても、その裏では多くの仕事が同時に進んでいます。

だからこそ、見えている一瞬だけで相手を判断しないこと。
そして、何気なく口にした言葉でも、誰かを傷つけてしまうことがあるのだと感じた出来事でした。

【体験者:40代・女性医療従事者、回答時期:2026年4月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

FTNコラムニスト:Anne.R
看護師として9年間、多くの人生に寄り添う中で「一人ひとりの物語を丁寧に伝えたい」とライターの道へ。自身の家づくりやご近所トラブルの実体験に加え、現在は周囲へのインタビューを通じ、人間関係やキャリアなど女性の日常に寄り添った情報を発信している。