「子どもにつらい道を歩んでほしくない」「夢を見るのではなく現実を見て」――そう考えるのは親の愛でしょうか、それともエゴなのでしょうか。
今回は、筆者の友人一家に起こった“自分の夢”に関するエピソードを紹介します。

実現した“弟の店”へ行く私たち

その後、コツコツと料理の修行を重ねた弟は、ついに自分の店を持つことになりました。

それまで、事あるごとに「今からでも遅くはないのよ」と、料理人を辞めて安定した職に就くよう説得を試みていた母。弟のお店がオープンした日、なんと「一緒に行こう」と私に声をかけてきたのです。

店に着くまで、ほとんど会話をしなかった私たち。母はどのような思いで、私を誘ってきたのかはわかりません。そして弟に大学進学を勧めていた私もまた、弟の店に行っていいものなのか迷いながら足を進めたのでした。

店のドアを開けると、そこには忙しそうに、そして嬉しそうな表情でカウンターの中にいる弟の姿があったのです。

母の気持ちも弟の気持ちもわかるからこそ

私たちに気づくと驚いた表情を見せた弟。それでも「来てくれたんだ」と照れくさそうにしながら、カウンターの2席を案内してくれました。

注文した料理を運んできた弟が「どうぞ」と一言。小さく「いただきます」と言って一口食べる母。

すると、「おいしい」と言う前に「ごめんね」と言いながら、静かに涙を流したのです。

自分の夢を持って立派にやり遂げた弟の姿、目の前で弟の料理を食べて涙している母を見て、私も涙があふれます。母の気持ちも、弟の気持ちもわかるからこそ“正解”はないのだと思った出来事でした。

【体験者:40代・女性会社員、回答時期:2025年12月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

FTNコラムニスト:清水マキ
育児を機にキャリアを転換し、独学からライター講座の添削講師まで登り詰めた実力派。PTAやスポ少での積極的な交流から、ママたちの「ここだけの話」を日々リサーチ。金融記事も手がける確かな知性と、育児に奮闘する親としての等身大な目線を掛け合わせ、大人女性のライフスタイルから切実な悩みまでを鋭く、温かく描き出す。