筆者の話です。
定年後は、夫婦でゆっくり過ごせるものだと思っていました。
けれど実際に始まった毎日は、想像していた老後とは少し違っていて──。
定年後は、夫婦でゆっくり過ごせるものだと思っていました。
けれど実際に始まった毎日は、想像していた老後とは少し違っていて──。
増えた在宅
「ちょっと音小さくしてくれる?」
夫が定年退職してから、家にいる時間が一気に増えました。
これまでは仕事中心の生活で、平日は顔を合わせる時間も限られていたのです。
定年後は、二人で旅行へ行ったり、のんびり過ごしたり。そんな老後を自然と思い描いていました。
けれど最近、耳が遠くなってきた夫は、出かけることを嫌い、家でテレビを観ていることが多くなりました。
そして、音量をかなり大きくするようになったのです。
私が頼んでも「聞こえんのよ」とすぐに元へ戻されてしまいます。
積もる音
朝から流れているのは、夫が好きなパチンコ番組でした。
派手な効果音と実況の声が部屋に響き、うたた寝をしていてもテレビだけはついたままです。
私はキッチンで洗い物をしながら、何度もリモコンに目を向けていました。
頭が重くなってきても「また言ったら嫌な顔をされるかな」と思うと、強くは言えません。
さらに「お茶ある?」「これどこ?」「昼ご飯どうする?」
そんな声が、一日に何度も飛んできます。
台所に立つたび、次は何を聞かれるのだろうと身構える自分がいました。