育児疲れが限界だったあの夜、息子を怒鳴りつけてしまいました。
しょんぼりと部屋に消えた5歳の背中を見て後悔したものの、素直に謝れないまま時間が経ちます。するとそろそろとリビングに戻ってきた息子が、一枚の絵を差し出してきました。そこに書かれていた言葉の意味に気づいたとき、私は崩れ落ちました。
渡された一枚の絵
画用紙には、泣き顔のママと、その隣に小さな男の子が寄り添っている絵が描かれていました。
上には、ひらがなで一生懸命書いたのでしょう、こんな文字が並んでいます。
「ないてるママ」
「……R太、これ、ママのこと?」
聞くと、R太は小さくうなずきました。そして、ためらいがちにこう言いました。
「ママも、ないてたから。いっしょに、ないていいよ」
5歳が教えてくれたこと
その瞬間、ぐっと抑えていたものが溢れ出しました。
怒鳴られて部屋に消えたあと、R太は泣いたり拗ねたりするのではなく、ママのことを心配してこの絵を描いていたのです。
疲れ果てて余裕をなくしていた私の姿を、この子はちゃんと見ていました。
「ないてるママ」という言葉が示すように、怒っていたのではなく、苦しかったのだということまで、5歳なりに感じ取っていたのです。
まだ5歳とわかっていながら「お兄ちゃんだから」と何度も言い聞かせていた私。
一方彼は5年間しか生きていないのに、こんなにもしっかりと相手を見て感じて、優しかった。
怒鳴った側の私が、息子に慰めてもらっていました。
R太をぎゅっと抱きしめながら、しばらく泣きました。
「さっきはごめんね」と言うと、「いいよ」とあっさり返ってきました。
子どもの心の広さに、親である私がいちばん救われた夜でした。
【体験者:30代・女性・会社員、回答時期:2026年4月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:K.Matsubara
15年間、保育士として200組以上の親子と向き合ってきた経験を持つ専業主婦ライター。日々の連絡帳やお便りを通して培った、情景が浮かぶ文章を得意としている。
子育てや保育の現場で見てきたリアルな声、そして自身や友人知人の経験をもとに、同じように悩んだり感じたりする人々に寄り添う記事を執筆中。ママ友との関係や日々の暮らしに関するテーマも得意。読者に共感と小さなヒントを届けられるよう、心を込めて言葉を紡いでいる。