Aさんが泣き出した理由
「ど、どうしたの?」と慌てる私に、Aさんは教えてくれました。
「ごめんなさい、なかなか会えていなかったから伝えられていなくて。実は先月、兄が亡くなったの」と。
私以外のママ友は、頻繁に会えていたので話を聞いていた様子。
でも、私は久しぶりの参加だったので、大切な友人が抱えていた悲しみを知らずにいたのです。
お菓子は「楽しい思い出」だけじゃない
Aさんのお兄さんは長く病を患っていましたが、家族の手厚いサポートもあり、穏やかに過ごしていると聞いていました。
近所のスーパーで、Aさんがお兄さんの車椅子を押しながら買い物をする姿を何度も見かけていただけに、私は言葉を失いました。
その日配られていたお菓子は、旅行の土産ではなく、葬儀の際にお香典を包んでくれた仲間への感謝が込められた「志」だったのです。
「何も知らなくて、ごめんなさい」と謝ると、
「そんなことない。わざわざ連絡することでもないし、会ったら伝えようとは思っていたんだけど」と。
Aさんはお兄さんとの最後の時間がいかに慌ただしく、精一杯のものだったかを話してくれました。
みんなが持ち寄るお菓子。
そこには必ずしも「楽しい思い出」だけが詰まっているわけではない。
安易な決めつけで言葉を発してはいけないと、深く胸に刻んだ出来事でした。
【体験者:40代・女性会社員、回答時期:2026年4月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:Yuki Unagi
フリーペーパーの編集として約10年活躍。出産を機に退職した後、子どもの手が離れたのをきっかけに、在宅webライターとして活動をスタート。自分自身の体験や友人知人へのインタビューを行い、大人の女性向けサイトを中心に、得意とする家族関係のコラムを執筆している。