施設に入っている母の受診に付き添う中で、同じ外出でも感じ方の違いに戸惑っていました。
思わずこぼれた一言のあと、気づいたことがありました。
引いた言葉
その言葉を聞いたとき、正直ほっとした気持ちがあったのも事実です。
けれど、窓の外を見たまま、しばらく動かなかった母の横顔が、どこか遠く感じられました。
「このまま帰ったら、絶対に後悔する」
帰り道、どこか引っかかりが残ったため、やはりスーパーに立ち寄ることにしました。
最初は遠慮していた母も、売り場に入ると少しずつ表情がやわらぎ、楽しそうに商品を手に取ります。
「これ、いいね」「あれも見てみたい」
棚の前で立ち止まり、ひとつひとつ確かめるように見てまわる姿が印象に残りました。
気がつけば、買い物かごは母が施設に持ち帰りたい、お気に入りのおやつのお菓子でうまっていったのです。
気づいた意味
キラキラした目で品定めをする母の様子を見て、この外出は自分が思っていた以上に、母にとって大切な時間だったのだと気づきました。
施設での安心安全な暮らしの中では味わえない、外の空気に触れ、自分で好きなものを選び、娘と並んで歩く時間。それこそが、母にとっての「生きがい」だったのです。
次は体力を温存して「どこか寄りたいところある?」と、先に聞いてみようと思いました。
母にとってこの時間は、年に数回しかない外出のひとつ。
そう考えると、言葉のかけ方ひとつで、その過ごし方は変わるのかもしれないと感じた出来事です。
【体験者:50代・筆者、回答時期:2026年5月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:Kiko.G
嫁姑問題をメインテーマにライター活動をスタート。社宅生活をしていた経験から、ママ友ネットワークが広がり、取材対象に。自らが離婚や病気を経験したことで、様々な悩みを持つ読者を元気づけたいと思い、自身の人脈や読者の声を取材し、記事として執筆。noteでは、糖尿病の体験記についても発信中。