箱の中身は
箱の中に入っていたのは、色とりどりの手書きの封筒と、大きな寄せ書きでした。
「いつもありがとうございます」「また来てね」「〇〇くんが笑ってた」「大好き」
丸くて大きな文字、不揃いなひらがな。
子どもたちが書いたとわかる文章が、びっしりと並んでいました。
娘が「ねえ、これ誰から?」と首をかしげる横で、私はしばらく言葉が出ませんでした。
夫が誰にも言わずに続けていたこと
帰宅した夫に尋ねると、ばつが悪そうに話し始めました。
実は数年前から、週末の数時間を使って、障がいのある子どもたちの支援ボランティアに参加していたというのです。
「なんで言わなかったの?」と聞くと、「言うのが恥ずかしくて」とぼそっと答えました。
思い返せば、月に何度か「ちょっと出かけてくる」と言って外出することがありました。てっきり友人と会っているのだと思っていたのに、まさかそんな場所で、誰かの笑顔のために時間を使っていたなんて思いもよりませんでした。
「知っているつもり」を卒業して、見えてきたもの
普段の夫といえば、靴下は脱ぎっぱなし、ゴミ出しも時々忘れる……。そんな些細なことで、私は毎日小言ばかり言っていました。
文句を言われながらも黙って聞いていた夫の、家族さえも知らない「もう一つの顔」。
「パパってすごいね」
寄せ書きを眺める娘の素直な一言が、私の胸に深く刺さりました。
夫のことをわかっているつもりで、ほんの一部しか見ていなかったのかもしれません。
これからは少しだけ、夫に優しい気持ちで接することができそうです。
【体験者:30代・女性・主婦、回答時期:2026年4月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:K.Matsubara
15年間、保育士として200組以上の親子と向き合ってきた経験を持つ専業主婦ライター。日々の連絡帳やお便りを通して培った、情景が浮かぶ文章を得意としている。
子育てや保育の現場で見てきたリアルな声、そして自身や友人知人の経験をもとに、同じように悩んだり感じたりする人々に寄り添う記事を執筆中。ママ友との関係や日々の暮らしに関するテーマも得意。読者に共感と小さなヒントを届けられるよう、心を込めて言葉を紡いでいる。