通帳に並んだ数字にびっくり
先日、夏休みの旅行を節約しようとする夫に呆れた私は「子どもたちも楽しみにしているし、たまにはいいでしょ。どうしてそんなにケチるの?」と詰め寄りました。
ブスッとしながら、夫が黙って差し出したのは、一冊の通帳。
そこに記されていたのは、私の想像を遥かに超える金額の貯金でした。
「どうしてこんなに……」
そう尋ねると、夫は真っ直ぐ私を見て言いました。
「もし俺が先にいなくなっても、お前と子どもたちが困らないようにしたいんだ。それに、お前は身体が丈夫じゃないだろ。無理して働き続けなくていいように、いつ辞めても大丈夫なようにしておきたい。それだけだよ」
夫は30代の頃から、私と子どもたちの未来をずっと考えてくれていたのです。
すれ違っていた思い
夫の思いは痛いほど分かりましたが、だからといって必要以上に切り詰める今の状態を続けていくことが、家族にとって良いとは思えませんでした。
そこで、私はあえて本音を伝えました。
「いろいろ考えてくれてありがとう。でも、未来の安心のために今の笑顔を犠牲にするのは寂しいよ。今、家族で笑い合う思い出も、未来の私を支える貯金になるんじゃないかな」
夫はハッとした顔で黙り、しばらく考え込んでいました。
家族で描く新しい「心の貯金」
それから半年。
相変わらず節約が大好きな夫ですが、時々「たまにはパーっと行こうか」という、以前では考えられなかった言葉がぽつりと出るようになりました。
子どもが行きたがっても「高いからダメ」と反対していたテーマパークへも、ついに家族で行くことができたのです。
高いチケット代に苦笑いしつつも、「これは心の貯金だな」と財布を出してくれた夫。
将来への備えと、今しか作れない思い出、その両方を少しずつ大切にできるようになりました。
お金だけでは測れない豊かさを、ようやく同じ目線で感じられるようになった気がします。
【体験者:40代・女性パート職員、回答時期:2026年3月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:藍沢ゆきの
元OL。出産を機に、育休取得の難しさやワーキングマザーの生き辛さに疑問を持ち、問題提起したいとライターに転身。以来恋愛や人間関係に関するコラムをこれまでに1000本以上執筆するフリーライター。日々フィールドワークやリモートインタビューで女性の人生に関する喜怒哀楽を取材。記事にしている。