さらには、見かねた私が父の世話を手伝おうとしても、父は慣れない生活への苛立ちからか、私の手助けに文句ばかり。結局、母は落ち着いて入院治療に専念することすらできず、父のことが心配で先生にお願いし、予定を早めて退院することを選んだのでした。
闘病中に悟った母の強烈な後悔
この時の経験は、母の心に大きな影を落としました。後日、新婚だった私に向かって、母はポツリとこうこぼしたのです。
「お父さんのこと、最初から何でも私がやってあげすぎたわ。夫を育てなかったことが、お母さんの人生で一番の後悔よ」
自分の病気の辛さよりも、何も出来ない夫のせいで休むことすら許されなかった虚しさと疲労感が、母に「夫を育てなかった」という言葉を吐露させたのでした。
新婚の私への教訓と、定年後の「再教育」
「あなたも結婚したばかりだから、最初から全部やってあげちゃ駄目よ。ちゃんと自分のことは自分でできるように、二人で協力する形を作りなさい」
母のその言葉には、娘に自分と同じ苦労をしてほしくないという深い親心がこもっていました。私はその教えを胸に刻み、何でも一人で抱え込まず、夫と家事の情報を共有し合うよう心がけています。
ちなみに現在、父は定年退職を迎えました。母は今からでも遅くないと、日々根気強く、父の「家事デビュー」をサポートしています。完璧にこなすことだけが妻の役目ではないと教えてくれた母の姿は、今でも私の夫婦生活の大きな指針になっています。
【体験者:40代・筆者、回答時期:2026年4月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターが経験したエピソードを踏まえ、主観的な視点で表現しております。
FTNコラムニスト:藤野ゆうこ
2度の離婚を経て、シングルマザーとして介護職の管理者を務める現役会社員。現場で触れてきた数多くの家族の人生模様や、自身の波乱万丈な実体験をベースに、読者が同じ苦労をしないための教訓を込めたコラムを執筆。現在は介護現場や周囲への取材を通じ、嫁姑・夫婦関係・ママ友など、複雑な人間関係のトラブル解決に繋がる情報を発信中。