「今日あった面白い話」をひとつだけ
「今日から毎日ひとつ、お互いに面白い話を披露し合わない?」
私のそんな提案を、夫は怪訝な顔をしながらも受け入れてくれました。
もしかしたら、夫も今の夫婦関係に多少の危機感を感じていたのかもしれません。
こうして始まった私たちの新しい習慣。
最初は「公園の鳩が全員同じ方向を向いて寝ていた」なんて、たわいもないネタで笑い合っていました。
笑えない日の本音
とはいえ、もちろん毎日「面白いこと」が起きるわけではありません。
「ごめん、今日は本当に何も面白いことがなかった。それどころか、仕事で……」
ある夜、申し訳なさそうな口調で、でも溢れ出すように始まったのは、夫の仕事の愚痴でした。
面白いことが言えない代わりに出てきた本音でしたが、それを聞いているうちに、私は夫が外でどれほど神経をすり減らしているのかを初めて知ることになったのです。
「そんなことがあったんだ、大変だったね」
話を聞いたあと、私が伝えたその一言で、夫の肩の力がふっと抜けたのが分かりました。
弱音を吐ける貴重な時間
「面白い話」がない日は、裏を返せば「心に余裕がなかった日」です。
何が辛かったのか、どうして笑えなかったのか……。
それを共有することは、面白い話で盛り上がる以上に、私たちの心の距離を縮めてくれました。
事務連絡の裏側に隠れていた、生身の弱音。
それを吐き出すことができるこの習慣が、今は夫婦でほっとできる大切な時間になっています。
“報・連・相”はもちろん必要ですが、「今日、お昼は何を食べた?」「今朝は寒かったね」という、何の生産性もない会話があるからこそ、私たちは夫婦でいられるのかもしれません。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2026年4月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:藍沢ゆきの
元OL。出産を機に、育休取得の難しさやワーキングマザーの生き辛さに疑問を持ち、問題提起したいとライターに転身。以来恋愛や人間関係に関するコラムをこれまでに1000本以上執筆するフリーライター。日々フィールドワークやリモートインタビューで女性の人生に関する喜怒哀楽を取材。記事にしている。