かけてもらった一言
そのとき、担当の歯科衛生士さんが言いました。
「お母さんは大変ですよね。大丈夫ですよ」
そう言ったあと、やさしく続けてくれたのです。
「お母さん、十分頑張っていますよ」
その言葉を聞いた瞬間、涙があふれました。
当時は誰にも分かってもらえない気がして、一人で抱え込んでいたのだと思います。
その言葉で、溜め込んでいたものが一気にほどけたように感じました。張りつめていたものがゆるみ、ようやく息ができたような感覚だったのです。
きっと次の予約もあるはずなのに、急かす様子はありません。一緒に子どもをなだめながら、ゆっくりと対応してくれました。
見え方が変わった
振り返ってみると、私はうまくできないことばかりに目を向けていたのかもしれません。
子どもが泣いてしまうことも、思い通りに進まないことも、その場では「困ること」としてしか捉えられていませんでした。
でもあのとき「頑張っていますよ」と言ってもらえたことで、できていない部分ばかりでなく、日々向き合っている自分自身にも目を向けられたのです。
私がつらかった原因は、子どもの行動そのものではなく、「うまくできていない」と感じていた自分自身だったのかもしれません。
同じ出来事でも、見方が変われば意味も変わります。
そのことを、今回の経験を通して深く心に刻みました。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2026年4月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:大空琉菜
受付職を経て、出産を機に「子どもをそばで見守りながら働ける仕事」を模索しライターに転身。 暮らしや思考の整理に関するKindle書籍を4冊出版し、Amazon新着ランキング累計21部門で1位に輝く実績を持つ。 取材や自身の経験をもとに、読者に「自分にもできそう」と前向きになれる記事を執筆。 得意分野は、片づけ、ライフスタイル、子育て、メンタルケアなど。Xでも情報発信中。