すぐに動いた姉
翌日、姉は子どもを連れて実家に来ました。母の様子を見るなり、迷いなく言ったのです。
「精神科の病院に行こう」
その言葉を聞いた瞬間、胸がざわついたのを覚えています。
私はただ「おかしい」と感じていただけで、その先を考えることから目をそらしていたのかもしれません。
姉は「考えすぎや疲れが重なって、心が限界なんだと思う」と話し、すぐに行動の提案をしたのです。そこで初めて状況の重さを理解した気がしました。
病院へ行こうと話し合いをするも、本人は「迷惑をかけるから」と繰り返すばかりでその日は応じてくれませんでした。
その後、日に日に食事の量は減り、外に出ることも少なくなっていきました。
(このままじゃ、マズい……!)
(でも、どうやって病院に連れて行ったらいいの!?)
焦る気持ちは強くなるのに、どう説得したらいいのか分からず、立ち止まることしかできませんでした。
迷いを断ち切った決断
ある日、姉が言ったのです。
「もう迷ってる時間はない。私が連れて行く」
小さな子どもを抱えながらも、その言葉にはためらいがありませんでした。
母は最初こそ拒んでいたものの、姉の真っすぐな姿に押されるように、小さくうなずきました。
そのまま車で病院へ向かい、医師からは「うつ病です、このまま入院しましょう」と伝えられました。
食事を拒んでいたため、そのときすでに体重は30㎏ほどまで落ちていたのです。ガリガリの腕に点滴をして病室のベッドに横になる姿を見て胸が締め付けられる思いでした。
あのとき姉が動かなければ、私はきっと行動にうつせていなかったと思います。
振り返ると、私は「確信が持てないと、動けない」と考えていました。間違っていたらどうしよう、母を傷つけたらどうしようと迷っていたのです。
けれど姉は、正しいかどうかよりも「今どうするか」を選んでいました。
あのときの一歩が、母だけでなく、私たち家族全体を支えてくれていたのだと、今は感じています。
【体験者:40代・筆者、回答時期:2026年4月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:大空琉菜
受付職を経て、出産を機に「子どもをそばで見守りながら働ける仕事」を模索しライターに転身。 暮らしや思考の整理に関するKindle書籍を4冊出版し、Amazon新着ランキング累計21部門で1位に輝く実績を持つ。 取材や自身の経験をもとに、読者に「自分にもできそう」と前向きになれる記事を執筆。 得意分野は、片づけ、ライフスタイル、子育て、メンタルケアなど。Xでも情報発信中。