筆者の話です。
子どもの頃、母の言い方に違和感を覚えたことがありました。
けれど今、自分が同じことをしていると気づいて――。

そのひと言

私は子どもの頃から正論こそが正義であり、ダメなことははっきりと伝えることが正しいことだと思い込んでいました。
だからこそ、かつて「ちゃんとして」と母に厳しい言葉をぶつけてしまったことがあります。
一緒に車で出かけると、母は助手席でナビゲートをしてくれました。
けれど、それがどうもあいまいになることが多いのです。

交差点でどちらへ進めばいいのかわからず、車を止めてしまうこともあります。
私は運転しながら、言葉と動きが合っていない状況に、どう受け取ればいいのかわからず戸惑っていました。

ズレの記憶

ハンドルを握ったまま、周囲の景色を見回します。
信号の位置や建物を確認しても、どちらへ進めばいいのか迷ってしまいます。
「どっち?」と助手席に向かって聞き返すと、母は「右」と言いながら手は左方向を指しています。
同じやり取りが続き、何度も聞き返すことになりました。

車を止める回数が増えるたびに、少しずつ苛立ちが積もっていきます。
「ちゃんとしてくれたらいいのに」
そんな一方的な気持ちが、心の中で膨らんでいきました。