悪気のないひと言
息子たちが満足して席を立ち、朝食が終わりかけた頃でした。まだキッチンで自分のホットケーキを焼いている私に、夫が「ジャムとかメープルシロップ、片付けていい?」と声をかけてきました。夫としては片付けを手伝おうとした自然な行動だったのだと思います。ただその瞬間、私はまだ一口も食べていないことに気づき、胸の奥に小さな寂しさが広がりました。「ホットケーキまだ焼いてるの見て分からないの?」「私まだ食べてないんだけど!」という言葉を飲み込みながら……。
自分のための一皿
言い返すほどではないけれど、少し気持ちが沈んでしまいました。そこで私は考えをポジティブに切り替えました。「家族と同じものを食べるのではなく、今この瞬間、私が一番食べたいものを自分のためだけに作ろう!」ジャムを片付け、ベーコンと卵を焼き、サラダも添えたワンプレート。家族のものより少しだけ豪華な、自分専用のスペシャルな一皿を整えたのです。作り終わった後、席に座りゆっくり味わった朝食は、思いのほか満足感のある時間になりました。
母として思ったこと
今回の出来事は、夫が意地悪だったわけではありません。夫なりに率先して後片付けをしようと思ったのでしょう。日常の中で「動いている人」の存在は見えにくくなりがち。それでも、家族のために動く人が後回しにならないような関係でありたいとも思いました。息子たちには将来、そばにいる人を自然に気遣える大人になってほしい。そんな願いを改めて胸に抱いた、ある休日の朝でした。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2026年3月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:ichika.K
2児の育児を機に、ママの悲喜こもごもを描くライターとしての活動をスタート。子育てメディアなどの執筆を経て、独立し現在はltnでコラムを連載中。大手企業の総合職でのOL経験、そこから夫の単身赴任によりワンオペでの育児を行った経験から、育児と仕事を両立するママの参考になる情報を発信すべく、日々情報をリサーチ中。