『お客様は神様』という言葉がありますが、時にはその言葉を盾にした理不尽な要求に、心が折れそうになることもありますよね。今回は、筆者の友人が学生時代に体験したエピソードを聞かせてくれました。
突きつけられた真実
叔父はあるページに行き着くと手を止め、
「当時、同じシミを確認し『これはクリーニングでも落ちません』とお伝えしたはずです。お客様は『いいから洗って』とおっしゃいましたね」
叔父の記憶と記録に、女性は絶句。
叔父がさらに本人が署名した控えを見せると、言い逃れができなくなった女性は顔を真っ赤にし、コートを奪い取って去っていきました。
プロの矜持が、悪質な言いがかりを退けたのです。
誠実な仕事が守るもの
叔父は女性の姿が見えなくなると、ふぅ……と息を吐き、「記録しておくものだなぁ」と私に向かって苦笑いしました。
けれど、私は思うのです。
台帳を見る前に「去年の10月にもお預かりした」と瞬時に目の前のコートと記憶が結びついたのは、叔父がすべての仕事に真剣に向き合っているからだと。
すごいのは、台帳ではなく、仕事に対する叔父の真摯な姿勢です。
古びて表紙が擦り切れた台帳を愛おしそうに撫でる叔父の横顔を見て、私は『これこそがプロの仕事なんだ』と、誇らしい気持ちになりました。
【体験者:20代・女性会社員、回答時期:2026年3月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:藍沢ゆきの
元OL。出産を機に、育休取得の難しさやワーキングマザーの生き辛さに疑問を持ち、問題提起したいとライターに転身。以来恋愛や人間関係に関するコラムをこれまでに1000本以上執筆するフリーライター。日々フィールドワークやリモートインタビューで女性の人生に関する喜怒哀楽を取材。記事にしている。