家族の習慣に、戸惑った経験はありませんか? 当たり前のように続いている行動も、本人でないとその良さが分からないことがありますよね。けれど時が経つと、その意味が少しずつ見えてくることもあるものです。今回は、筆者がコーヒー好きの父を見て感じたエピソードをご紹介します。
静かな朝に響く音
実家に住んでいた頃、休日の朝になると決まって聞こえてくる音がありました。キュイーンという、少し大きな機械の音です。
その正体は豆を挽く音。父は決まって豆からコーヒーをいれていました。
休日の静かな朝に突然響くその音を、当時の私はあまり好きではありませんでした。
けれど本人は、そんなことはお構いなし。嬉しそうにコーヒーをカップに注ぎながら、必ずこう言うのです。
「いい香りでしょう」
そう言われても、その良さがまったく分かりません。「はいはい」と軽く流していました。
心に残った光景
砂糖を入れて、ティースプーンでゆっくりかき混ぜる。そして最後にミルクをカップの縁からそっと垂らします。するとミルクがくるくると円を描きながら広がっていきました。
その様子をぼんやり眺めていると、不思議と穏やかな気持ちになったのを覚えています。
それから時が経ち、気がつけば私もコーヒーが好きになっていました。父の影響を受けていたのかもしれません。
今では父も年を重ね、以前のように車でお気に入りの豆を買いにでることはなくなりました。