それは、中学時代に自分をいじめていた同級生・B美でした。
まるで昔のことなどなかったかのように話しかけてくるB美。
戸惑うA子さんでしたが、そこへ娘が駆け寄ってきて――。
娘の無邪気な一言で、B美の表情が変わります。
過去の記憶と向き合うことになったA子さんが、最後にB美へ伝えた言葉とは――。
娘の入学式で、最悪の再会
あれは、娘の小学校入学式の日のこと。
保護者席で、ある女性と目が合った瞬間、晴れやかだった私の気持ちは一変し、思わず息をのみました。
「B美……?」
思い出したくない過去が一気にフラッシュバックし、蘇ります。
目の前にいる女性は、中学時代、私をいじめていたB美だったのです。
当時の私は、地味で大人しいタイプ。
クラスの中心にいたB美から、からかわれたり、陰口を言われたりして、学校に行くのが本当に辛かったことを、今でも覚えています。
そんな環境から逃げたかった私は、あえて家から遠い学校に進学し、高校卒業後、そのまま地元を離れました。
嫌な思い出しかない田舎から抜け出して、新しい場所で今日まで生きてきたのです。
それなのに、まさかこんなところでB美と再会するなんて。
こともあろうに、娘の入学式の日に――。
なぜ、話しかけてくるの?
式典が終わり、保護者は校舎の外で子どもたちを待つことになりました。
夫と並んで娘を待っていると、B美がこちらへ歩いてきます。
「もしかして……A子じゃない?」
――どうしてわざわざ話しかけてくるのよ。
心がザワザワし、逃げ出したい気持ちになりました。
けれど私はもう、何も言えなかった中学生ではありません。
大切な娘の母親なんです。
「久しぶりね」
平静を装って返事をすると、B美はパッと笑いました。
「やっぱり! 本当、偶然だね! うちの子も同じクラスなんだよ」
「え?」
まるで昔のことなどなかったかのような態度に、私はひどく戸惑いました。
もしかしてこの人、自分が昔どれだけひどいことをしたか忘れてしまったの? それとも覚えているのに、平気な顔をしているの?
どちらにしても、強い怒りを覚えます。
そのとき、大きなランドセルを背負った娘が、駆け寄ってきました。
「ママー!」
娘の純真な一言に、元いじめっ子の彼女は……
「あら可愛いわね! こんにちは♪」
「こんにちは」
笑顔で話しかけてきたB美に、娘は挨拶を返すと、私を見上げました。
「ママのお友達?」
すると、即座にB美が答えました。
「そうよ。中学生のとき同じクラスだったの」