下校時刻を過ぎても帰ってこない小学1年生の息子を心配して通学路を探しに行くと、原っぱにランドセルだけがぽつんと置かれていました。慌てて名前を呼ぶと、草むらの向こうから元気な声が返ってきて…。春の通学路でヒヤリとした出来事の結末とは。筆者の体験談をお届けします。

「えっ?」と思いながら近づいてみても、周りに息子の姿はありません。持ち主のいないランドセルだけが置いてある光景に、胸が締め付けられるような恐怖を感じました。私は慌てて、祈るような気持ちで大きな声で息子の名前を呼んだのです。

草むらの向こうから聞こえた声

すると、草むらの向こうから「はーい」と、聞き慣れた元気な声が返ってきました。声のした方を見ると、そこには息子の姿がありました。息子は、開いた傘を逆さまにして手に持っています。そして得意げな顔で近づいてきて、「いいものいっぱいあるよ」と嬉しそうに言いました。

傘の中をのぞいてみると、そこには白い小さな花がぎっしり入っています。シロツメクサです。どうやら、原っぱに咲いていた花を夢中になって集めていたようでした。傘をカゴに見立てて宝物を集める、子供ならではの発想でした。

新1年生の宝物

ランドセルを道ばたに置き、草むらの中で花を集める息子。その姿を見て、さっきまでの心配がすっと消えていきました。大人にとってはただの草花でも、新1年生の息子にとっては宝物だったのでしょう。春の通学路は、息子の目にはきっと発見と楽しさでいっぱいに見えていたのだと思います。

帰り道、傘いっぱいのシロツメクサを大事そうに持ちながら歩く息子の姿を見て、思わず笑ってしまいました。もちろん、家に着いてから「ランドセルを置いて一人で遊ぶのは危ないよ」としっかり言い聞かせましたが、あのときの原っぱと嬉しそうな息子の顔は、今でも春になると思い出すわが家の小さな思い出です。

【体験者:40代、筆者、回答時期:2026年3月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

FTNコラムニスト:M.Noda
家族との何気ない日々や子育ての経験が「誰かの力になれば」とライター活動をスタート。事務職で培った「正確さ」と、主婦・母としての「リアルな視点」を武器に、家族や義実家、人間関係の悩みに向き合う。自身の体験をベースにした共感度の高いエピソードを大切に、読者の心にそっと寄り添うコラムを執筆中。