牧場の中の小さな幼稚園で動物と育った筆者の息子。都会の小学校へ入学した後は、休み時間のたびに、たったひとりで本を読み続けていました。「友達の輪に入れないのではないか」という不安を抱えながらも見守り続けた3年間。子どもは自分のペースで、しっかりと花を咲かせてくれました。

世界のすべてだった「牧場」での日々

ニワトリと「鬼ごっこ」をして、野良猫と「だるまさんがころんだ」をしながら、息子は育ちました。2歳から年長まで通っていたのは、園児がほんの数人しかいない、牧場の中にある小さな幼稚園でした。

虫を捕まえて、泥だらけになって、動物たちに囲まれて過ごした日々。
大勢の子どもと賑やかに遊ぶより、いきものと過ごす時間のほうがずっと長かったのです。
それが息子にとっての、ごく自然な「日常」でした。

1年生、休み時間にひとりで本ばかり

離婚を機に引っ越し、1年生で都会の小学校へ。

環境はがらりと変わりました。クラスには何十人もの子どもがいて、休み時間になると校庭は一気に賑やかになります。

そんな中、息子はひとりで本を読んでいました。担任の先生との面談でも「本ばかり読んでいて心配です」と言われ、母親として心がざわつきました。

「たくさんのお友達と遊ぶ」という経験が明らかに少ない息子は、輪への入り方そのものがわからないのではないか……。ぽつんと座る息子の背中を想像しては、胸が締め付けられる思いでした。

逃げ道を用意することが、私にできる支え

しかし、母親にできることは限られています。友達を作ってあげることも、無理やり輪の中に入れてあげることもできません。結局は息子自身の問題なのです。

だからこそ私は、「もし本当に馴染めなかったら、あの田舎に戻ろう」と心に決めていました。そしてその覚悟を、息子にも正直に伝えていました。

「逃げ道がある、他の道もある」

そう伝えることが、慣れない環境で踏ん張る息子に対して、私が見せられる精一杯の支えだと思ったからです。

1年生280冊、2年生355冊。すっかり本の虫

1年生で280冊、2年生で355冊。

息子の読書量は加速するばかりで、「これが息子の世界なのかもしれない」と思い始めていました。

友達がいないわけではないけれど、誰かと群れるより、本の世界に没頭するほうが心地いいのかもしれない。それはそれで、息子らしいのではないか。そんなふうに、少しずつ受け入れていきました。