変わっていく長男
通院を重ねるごとに、長男の様子が変わっていきました。
最初はパニックを起こしていた病院にも、少しずつ慣れていきました。
装具をつけることへの抵抗が薄れ、診察室に入ることを怖がらなくなり、やがて主治医の顔を見ると自分から挨拶するようになりました。
言葉はたどたどしいけれど、長男なりに精一杯の「こんにちは」が診察室に大きく響くようになりました。
レントゲンに写る骨折部位の様子にも、変化が現れていました。
骨折部位の骨の形成が、医師の予想をはるかに上回るペースで進んでいるようです。
ある日の診察時、主治医が目を丸くしながら言いました。
「こんなに骨折部位の骨の形成が速いなんて、信じられない!」
その主治医の驚きの言葉が、私にはどんな褒め言葉よりも嬉しかったです。
近づいていく夢
また、主治医の長男を見る目が変わりました。
初めて診察室に入った時の、長男をいぶかしげに見る目は消えて、真面目に通院し自分から挨拶して診察室に入ってくる長男を微笑ましそうに見守る、温かい目になりました。
医師がカルテから顔を上げて長男に向ける笑顔は、この3か月で私たちが積み上げてきたものへの、無言の評価のように感じられました。
完全治癒には6か月かかると言われていました。
あの初診の時の大変だった事が、遠い日のことのように感じます。
あと3か月……。
長男が太鼓のバチを握る日を、今から心待ちにしています。
【体験者:50代・筆者、回答時期:2026年3月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:藍沢佑菜
管理栄養士の資格を持つ、2人の自閉症男子のママ。自身の育児環境の変化をきっかけに、ライター活動をスタート。食と健康を軸に、ライフスタイル全般のコラムを得意とし、実体験に基づいたリアルな記事を執筆中。専門的な情報を「わかりやすく、すぐに日常に取り入れられる形」で伝えることが信条。読者の「知りたい」に寄り添い、暮らしを整えるヒントを発信しつづけている。