焦りの中で口にした、あの一言
どうしよう、何か言わなきゃ……。
静まり返った空気、注がれる視線。そのプレッシャーに耐えきれず、私は混乱した頭で、場を丸く収められそうな「もっともらしい理由」を捻り出してしまいました。
「い、いまのは、練習です! これから本番をします!」
一瞬の静寂。
そして──。
「えーーーー!!」
大きなブーイングが起きました。
しまった、と思いました。けれど、もう言葉は戻りません。
結局、仕切り直しで競技は再開され、運動会は無事に終わりました。
後日届いたクレーム、胸に残った言葉
ところが後日、園にクレームが入りました。
「本気で参加したのに、“練習です”はないですよね」
その言葉を聞いたとき、胸が詰まりました。あのとき私は、何を守ろうとしたのだろう。
きっと私は、状況を正確に伝えることよりも、自分の焦りを鎮め、場を早く収めることを優先していました。
「少々お待ちください」と言えばよかった。
「確認します」と言えばよかった。
本気で走った人たちの気持ちを想像するより、自分の焦りを鎮める言葉を選んでしまったのです。
何年たっても、あの「えーーー!」という声が耳に残っています。あの瞬間の判断を、いまだに後悔しています。
あの日の私は、進めることに必死で、競技をしている人の気持ちを忘れていたのです。
運動会のたびに、あの出来事がふと頭に浮かびます。今では少し笑えるけれど、やっぱりどこかほろ苦い、忘れられない思い出です。
【体験者:40代・筆者、回答時期:2026年3月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:大空琉菜
受付職を経て、出産を機に「子どもをそばで見守りながら働ける仕事」を模索しライターに転身。 暮らしや思考の整理に関するKindle書籍を4冊出版し、Amazon新着ランキング累計21部門で1位に輝く実績を持つ。 取材や自身の経験をもとに、読者に「自分にもできそう」と前向きになれる記事を執筆。 得意分野は、片づけ、ライフスタイル、子育て、メンタルケアなど。Xでも情報発信中。