“資産”だと思っていた土地の現実
と思った、その時です。母が、ふと思い出したように言いました。
「あー、あとあの土地の話もね。もう早く手放したいわ」
土地? と私は聞き返しました。
すると、祖父がバブル期に富士山のふもとに購入した土地を、父とおじが相続しているのだと言います。
おじは価値があるうちに売却。わが家はそのまま持ち続けていました。
私は一瞬、期待しました。
「それ、売ったらいいじゃん!」
けれど父は、静かに言いました。
「売れないんだよ。だから毎年、固定資産税を払っているだけ」
え……。
「資産」だと思っていたものは、実は維持し続けることが負担となっている「負動産」の状態でした。
実際は、活用や処分が難しい土地を抱え、黙って税金を払い続けていたのです。
話してみて分かったこと
もし聞かなければ、私は何も知らないままだったでしょう。いずれ相続の場面で初めて知り、慌てていたかもしれません。
「まだ元気だから」と先延ばしにしていたら、本当に遅くなっていたと思います。
こうした話題を切り出すのは気まずいものです。けれど、それは不信ではなく、未来への備えなのだと今は思います。
私はあの日、少しだけ“大人同士”として両親と向き合えた気がしました。
あの土地は、すぐに解決する問題ではありません。
それでも、知らないままでいるより、ずっとよかったと思っています。
実際、家族で改めて話し合い、専門の不動産会社に相談してみることにしました。すぐに手放せる状況ではないようですが、まずは現状を知るところから始めています。
“まだ早い”と思っているうちが、きっと一番いいタイミングなのかもしれません。
【体験者:40代・筆者、回答時期:2026年2月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:大空琉菜
受付職を経て、出産を機に「子どもをそばで見守りながら働ける仕事」を模索しライターに転身。 暮らしや思考の整理に関するKindle書籍を4冊出版し、Amazon新着ランキング累計21部門で1位に輝く実績を持つ。 取材や自身の経験をもとに、読者に「自分にもできそう」と前向きになれる記事を執筆。 得意分野は、片づけ、ライフスタイル、子育て、メンタルケアなど。Xでも情報発信中。