みんながBさんに引き寄せられた
「あら、どうしたの?」
Bさんが声をかけると、泣いていた子がBさんの顔を見てピタリと泣き止み、彼女の顔をじっと見つめました。普段、なかなか心を開かない子が、自分からBさんの手を引いて遊びに誘う。
遊びの誘導、声かけのトーン、トラブルへの対処……そのすべてが驚くほど自然で、スマートでした。
私は何も言えませんでした。正直、自分の未熟さを突きつけられたようで、悔しかったのです。
園長が明かした、Bさんの「本当の経歴」
その日の夕方、私を見て不思議に思ったのか、園長が私を呼びこう告げたのです。
「今日から先生のクラスに入ったBさんね、〇〇区の公立保育所に正規職員として15年以上勤務されていたベテランなのよ。いろいろ勉強になると思うわ」
頭が真っ白になりました。
Bさんは子育てがひと段落したのを機に「また現場で子どもたちと関わりたい」とパートを選んだだけで、保育士としてのキャリアは私の2倍以上に及んでいたのです。
「肩書き」にしがみついていた自分が、恥ずかしかった
私は自分がBさんに取ってきた態度を思い返し、顔が熱くなりました。
勝手に実力を決めつけ、対等なパートナーとして接してこなかったこと。
意見を聞かなかったこと。
「パートさんは」と見下した言葉の数々。
それから私は、Bさんにこれまでの非礼を詫び、改めて自分から挨拶をするようになりました。
「B先生、保育のことで相談させていただいてもいいですか?」
Bさんは嫌な顔ひとつせず、「もちろんです。一緒に考えましょう」と、いつも丁寧に答えてくれました。
この出来事をきっかけに、私は「肩書き」ではなく「その人の実力と、子どもに向き合う姿勢」を何より大切にするようになりました。
パートも正規も関係ない。
大切なのは、子どもたちとどう向き合っているか。
あの日の独りよがりな自分を、今でも恥ずかしく思います。
【体験者:20代、女性保育士、回答時期:2024年11月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:K.Matsubara
15年間、保育士として200組以上の親子と向き合ってきた経験を持つ専業主婦ライター。日々の連絡帳やお便りを通して培った、情景が浮かぶ文章を得意としている。
子育てや保育の現場で見てきたリアルな声、そして自身や友人知人の経験をもとに、同じように悩んだり感じたりする人々に寄り添う記事を執筆中。ママ友との関係や日々の暮らしに関するテーマも得意。読者に共感と小さなヒントを届けられるよう、心を込めて言葉を紡いでいる。