夫の母が他界し、ふと思い出したのは帰省のたびに私の席に置かれていた煮物のことでした。もっと詳しく作り方を教わればよかったと悔やむ中で、今になって気づいたものがあります。今回は、義母の一皿から私が受け取っていた“本当の贈りもの”についてのお話です。
突然の別れで、気づいたこと
その後、義母は脳梗塞で倒れ、そのまま帰らぬ人となりました。
あの煮物は、もう食べられません。
──もっと教わればよかった。
けれど今になって気づきました。
義母は、味よりも先に、気持ちを渡してくれていたのかもしれません。
私の席に、何も言わず煮物を置いてくれること。
それが義母の、静かなやり取りだったのだと。
受け取っていた、やさしさ
当時の私は、「本当のレシピ」を知りたがっていました。でも、残ったのは調理方法ではなく、あの食卓の空気でした。
私も煮物を作ります。しかし、同じ味にはなりません。
それでも、誰かの席にさりげなく置くとき、義母を思い出します。
味は再現できなくても、あのやさしさは、少しだけ受け取れたのかもしれません。
【体験者:40代・筆者、回答時期:2026年2月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:大空琉菜
受付職を経て、出産を機に「子どもをそばで見守りながら働ける仕事」を模索しライターに転身。 暮らしや思考の整理に関するKindle書籍を4冊出版し、Amazon新着ランキング累計21部門で1位に輝く実績を持つ。 取材や自身の経験をもとに、読者に「自分にもできそう」と前向きになれる記事を執筆。 得意分野は、片づけ、ライフスタイル、子育て、メンタルケアなど。Xでも情報発信中。