ところがお葬式当日、会場には初めて会う年配の方が続々とやって来ました。
その方々は私の顔を見ると、
「立派になったわね」
「お母さんそっくりだな」
など、声を掛けていきます。
私が戸惑っていると、一人のおじいさんがやって来てこう言ったのです。
「驚かせてすまない。君は知らないだろうけど、私たちは君の親戚だよ。お母さんが若い頃、一方的に絶縁宣言をしてから会うことはなかったけど……最後のお別れがしたくてね」
おじいさんのその言葉に、私は驚きのあまり何も言えなくなってしまいました。
真相とこれからについて
父に問い詰めると、驚くべき真相が判明しました。
もともと父の家は親戚付き合いをとても大切にする人だったそうです。
しかし若くして嫁いだ母にとって、その付き合いは心身を削るほどの大きな負担になっていたそうなのです。
悩んだ末、母は「親戚と距離を置きたい」と父に訴え、父もまた、母を守るために親族と絶縁に近い形で隣町へ移住する決断をした、というのが事の顛末でした。
久しぶりに親戚と再会した父は、涙目になっていました。
「今まですいませんでした」と頭を下げた父に、みなさん優しくうなずきます。
母が頑なに「親戚はいない」と言い続けたのは、自分たちが選んだ新しい生活と私を守るためだったのかもしれません。母の孤独や葛藤を思うと、今では胸が締め付けられる思いがします。
ですが、そんな母を許し、最後に見送りに来てくれた親戚の方々の優しさにも救われました。
これからは、母が守ろうとしたものと、親族との新しい縁、どちらも大切にしながら交流を続けていきたいと思っています。
【体験者:50代・女性主婦、回答時期:2026年2月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:Junko.A
子育てに奮闘しながら、フリーランスのライターとして活躍中。地方移住や結婚、スナックの仕事、そして3人の子育てと、さまざまな経験を通じて得た知見をライティングに活かしている。文章を書くことがもともと好きで、3人目の子どもを出産後に、ライターの仕事をスタート。自身の体験談や家族、ママ友からのエピソードを元に、姑に関するテーマを得意としている。また、フリーランスを目指す方へ向けた情報ブログを運営中。