そう言いながら、今度は子どものほうへ手を伸ばします。
その瞬間、娘が驚いたように立ち止まりました。私のほうを一瞬見上げ、ぎゅっと服の裾をつかみました。
その小さな手の力で、私はハッと我に返ったのです。
「親切心」かもしれないけれど
私もママ友も、とっさに声を重ねました。
「本当に大丈夫です」
少し強めの口調だったと思います。女性は残念そうな表情を浮かべて、そのまま離れていきました。
その場に残った私たちは、しばらく啞然。
親切心だったのだろう、ということは分かります。きっと悪気はなく、私たちを楽にしてあげようと思ってくれたのでしょう。
それでも、知らない人に突然距離を縮められたことで、私は自分の中の線を意識しました。
善意かどうかではなく、私が守る側であるという事実が、はっきりと胸にあったからです。
私が守りたかったもの
どんなに優しい言葉でも、我が子に手が伸びるその一瞬だけは、受け入れられないと感じたのです。
子どもはまだ小さく、何をするか分からない年齢です。目を離さない、たとえ短い時間でも他人に任せない。当然、この判断だけは揺らぎませんでした。
親切な言葉を向けられたときほど、自分はどこまでなら受け取れるのか。あの出来事は、その線を改めて確認するきっかけになりました。
【体験者:30代女性・主婦、回答時期:2026年2月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:大空琉菜
受付職を経て、出産を機に「子どもをそばで見守りながら働ける仕事」を模索しライターに転身。 暮らしや思考の整理に関するKindle書籍を4冊出版し、Amazon新着ランキング累計21部門で1位に輝く実績を持つ。 取材や自身の経験をもとに、読者に「自分にもできそう」と前向きになれる記事を執筆。 得意分野は、片づけ、ライフスタイル、子育て、メンタルケアなど。Xでも情報発信中。