リビングに通されてハッと気が付きました。
娘たち家族が住んでいるのは2LDKのアパートです。
五月人形の収納箱が部屋の一角を占めてしまい、七段飾りを広げるスペースも収納するスペースも
どこにもなかったのです。
娘の本音
娘はためらいがちに口を開きました。
「お母さん、気持ちはすごく嬉しいの。でも、五月人形が大きくて、毎年飾るのも片付けるのも本当に大変。七段飾りの雛人形なんて、うちには置く場所がないのよ」
そう言って、娘は五月人形を飾った時の部屋の写真を見せてくれました。
確かにリビングの大部分を占領し、子どもたちが遊ぶスペースも狭くなっていました。
娘は続けました。
「お母さんの愛情は痛いほど分かる。でも、今の私の家には、もっとコンパクトなものがいいの。ずっと言えなくてごめんなさい」
私は自分の「飾って欲しい」という気持ちばかりを優先して、娘たちの生活環境を全く考えていなかったのです。
本当の愛情とは
私は深く反省しました。
「相談もせずに勝手に送ってしまってごめんね」
娘と話し合った結果、七段飾りはお店に相談して引き取ってもらい、代わりに娘が選んだコンパクトな親王飾りを購入し直すことにしました。
五月人形も、来年からは飾りやすい小さめのものに買い替えることを提案しました。
娘は涙を浮かべて「ありがとう」と言ってくれました。
後日、新しい親王飾りと孫娘が一緒に写った写真が送られてきました。
その笑顔は、以前よりもずっと自然で幸せそうでした。
愛情は、相手の生活や気持ちに寄り添ってこそ、本当の意味で伝わるのかもしれません。
善意であっても相手の状況を考えずに押し付けてしまえば、かえって負担になってしまうということです。
娘は私の気持ちを傷つけまいと、ずっと我慢していたのでしょう。
この出来事があってから、何かを贈る前には必ず娘に相談するようにしています。
「本当の愛情」とは、相手の立場に立って考え、対話を重ねながら築いていくものなのだと孫たちの節句を通じて学ぶことができました。
【体験者:80代女性・主婦、回答時期:2015年5月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:藍沢佑菜
管理栄養士の資格を持つ、2人の自閉症男子のママ。自身の育児環境の変化をきっかけに、ライター活動をスタート。食と健康を軸に、ライフスタイル全般のコラムを得意とし、実体験に基づいたリアルな記事を執筆中。専門的な情報を「わかりやすく、すぐに日常に取り入れられる形」で伝えることが信条。読者の「知りたい」に寄り添い、暮らしを整えるヒントを発信しつづけている。