子どものハレの日である卒園式や入学式。主役はもちろん子どもたちですが、親にとっても身だしなみや装いに気を遣う日ですよね。中には劣等感を抱いてしまう人もいるのではないでしょうか。今回は、筆者の友人N香の体験談をご紹介します。

ベテランママの一言

そんな空気を変えたのは、園で一目置かれているベテランママのY美さんでした。

彼女はいつもシンプルな装いですが、立ち居振る舞いが美しく、明らかに他の人たちとはオーラが違っています。
その日も落ち着いたグレーのスーツを纏い、誰よりも凛として見えました。

しかし、ブランド自慢に余念がないママ友が「Y美さんのスーツはどこのブランドですか?」と食い気味に尋ねると、Y美さんは自慢話に加わることなく、穏やかに微笑んで私の背中に手を添え、こう言ったのです。

「私のは母から譲り受けた古いものなのよ。N香さんのスーツもとっても素敵よね。良い生地なのはもちろん、何より大切にお手入れされているのが伝わってくるわ」

Y美さんは、ブランド名を誇るママたちを否定することなく、静かに続けました。
「物を大切にするお母さんの背中を見て育つお子さんは、きっと心豊かな子になるでしょうね」

その言葉に、それまで騒がしかったママたちの顔から、余裕たっぷりの笑みが消えました。

本当の「品の良さ」とは

高価なものを買うことが悪いわけではありません。
質の良さには、きちんと理由があります。

けれど、「品」とは値段のことではない。

見栄を張らず、他人を下げず、さりげなく誰かを立てられること。
その場の空気をやわらかく整えられること。

Y美さんの一言には、そんな静かな強さがありました。
その証拠に、式が終わるまで誰一人として他人の服装を口にすることはなかったのです。

【体験者:30代・女性主婦、回答時期:2026年1月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

FTNコラムニスト:藍沢ゆきの
元OL。出産を機に、育休取得の難しさやワーキングマザーの生き辛さに疑問を持ち、問題提起したいとライターに転身。以来恋愛や人間関係に関するコラムをこれまでに1000本以上執筆するフリーライター。日々フィールドワークやリモートインタビューで女性の人生に関する喜怒哀楽を取材。記事にしている。